AfterStory~彼女と彼の話~
 それからの展開は早く、私たちがB警察に戻ると田中先輩が相談者から犯人の特徴と女性の証言を照らし合わせて、再び女性の元へ訪れた。

 そして今回の犯人の逮捕となったのだけれど、何と私が聞き込みをした女性は相談者を襲った犯人の身内だったようで、私たちが訪れた時点で犯人はその家にいたとのこと。

 女性が犯人の男性に自首をするように説得したけれど、犯人の男性は頑なに抵抗している最中に私たちが再び訪れたことによって逮捕となった。

「あの女性、『背の低い男性は知らない』って言っていただろ?普通なら見たことないか知らないと言うが、はっきりと"背の低い"という言葉が出た時にもしやって思った」

 男性の取り調べを終えた田中先輩が報告書を書きながら、逮捕の決め手となった女性の証言について教えてくれた。

 私なんてただ聞いたことを書いていただけだから、こうして逮捕につながる証言を聞き逃さなかった田中先輩がいなかったら解決に向かわなかったと反省する。

 刑事である彰が私の失態を聞いたら、どんなふうに言うかな?呆れちゃうかな?所属している課は違うけれど、恋人に恥じない自分でありたい。

 調書をまとめ、帰宅時間となったので上がらせてもらった。

 廊下を歩いていると、先ほどまで騒々しかった刑事課の周りはしぃんとしていて、中を覗いてみたら誰一人も居ない。

 普段なら何があってもいいように1人は居る筈だけど、無人だ。

 さっき田中先輩に睨んだ男性の刑事のこともあるし、本当に何かあったのかもしれない。

 彰にメッセージを送りたいけど、送ったところですぐ返信がくるとは思えないから、ここは先に彰の部屋に行った方がいいよね。

 刑事課を後にして、駅に向かった。
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