AfterStory~彼女と彼の話~
 目的地に着いてタクシーから降りると、ある1軒屋には葬儀に使われる行灯が掲げられていた。

 喪服を着た人たちが続々とその家の中に入っていき、そして玄関先に山崎さんが立っているので駆け寄る。

「山崎さん、お待たせしました」
「よぉ、悪いな」
「あの―…」
「貴方は帰って下さい!!」

 何があったのですか?と聞こうとしたら、家の奥から女性の大きな声が聞こえ、女性の声が家中に響いたのか、周囲の人たちはピタッと止まる。

「主人を…、主人をこんな目に合わせた貴方に手を合わせてもらう筋合いはありません!帰って下さい!!」

 また女性の声が響くと、家の奥にある部屋の引き戸が開かれ、そこから彰が出てきた。

 彰は部屋から出てきた喪服を着た男性に付き添われてこちらに向かってきて、私に気づくと目を見開く。

「……」

 彰は俯きながら無言で私と山崎さんの横を通り過ぎて、通りを歩いて角を曲がった。

「あいつを頼む」
「はい」

 山崎さんの言葉に頷いて、急いで彰の所に走り出す。

 さっきの彰、唇を噛んでいて、とても思い詰めていた表情をしていた。

「何処に行ったんだろう」

 息切れしながら彰の姿を探すけど見当たらなくて、スマホに電話をかけても反応がない。

「雨が…」

 頬に滴が1滴落ちたと思ったら、徐々にその滴の量が増え始め、急いでバックから折り畳み傘を広げた。

 道路は瞬く間に大きな水たまりになって、歩くたびに雨水が靴に染みこんでいく。
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