AfterStory~彼女と彼の話~
 滝のような雨が降り続いて、傘をさしていても意味が無いように思える。

 コインランドリーのお店を横切り、小さな公園の前を通り過ぎようとしたら、公園の中にあるベンチに傘もささないでずぶ濡れになっている彰が座っていた。

 あんなに濡れていたら風邪を引くし、下手したら病気にかかっちゃうじゃない。

 すぐさま彰の側に駆け寄って傘を彰の頭の上にもっていくと、彰が見上げ、その瞳は真っ赤で、頬を伝う滴は雨だけじゃないのが分かる。

「……」

 彰は座ったまま無言で腕を伸ばして私の腰を抱くと、私は差していた傘を手放して彰を抱きしめた。

 降り注ぐ雨は弱まることは無く、着ていた洋服は雨の水分を含んでいて肌に張り付いていて、お気に入りの靴なんて履いている意味がないくらいに濡れているけど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

 雨で彰の着ているスーツが濡れていて体も震えているけれど、それは雨だけのせいじゃない。

 雨音に交って彰の泣き声が小さく聞こえ、泣いている理由は先ほどの女性の声や喪服を着た人たちで察するけれど、私は母親があやすように彰の頭を撫でると、彰は私の服に顔を押しあてて腕の力が増した。

 いつも自信家な彰が、泣いている。

 いつも彰には傍で支えてもらっているから、私も彰のことを支えたい…、こうして傍で彰に寄り添って、彰の気持ちを受け止めていたいから彰を抱きしめる腕の力を強めた。

 この雨が彰の気持ちを流して欲しい、そんなことを想いながら彰を抱きしめる。
< 156 / 165 >

この作品をシェア

pagetop