AfterStory~彼女と彼の話~
 翌日、いつも通りにB警察署に登庁して、生活安全課に入った。

 痛めた左手は湿布と包帯で処置をして、右手はまだまだ使えるので仕事を始める。

「聞いたよ?大変だったね」
「無事に犯人が捕まったから良かったです」

 生活安全課の皆から次々と昨日のことを聞かれ、南山があの場に来てくれなきゃもっと悲惨なことになってたので、後で南山の所にいかなくちゃ。

 お昼になって、少しだけ外の空気を吸いたくなったから屋上に向かい、うーんっと腕を伸ばして、気持ちを切り替えようとする。
 
「おい」

 私の隣に南山が来て、私たちは屋上の手すりに体を預けた。

「左手は?」
「湿布を貼ったから大丈夫。南山こそ何か上司から言われた?」

 ひったくり犯をぶった訳だし、私のせいで処分を言われたかもしれないから、ドキドキする。

「まぁ…、山さんからゲンコツ1つ貰った」
「えっ?!」
「『何やってんだ!』でゲンコツ」
「私のせいでご免…」
「俺なんかより、お前の方が心配だ」

 南山は私をそっと抱き締めた。

 久しぶりに感じる南山の体温に、今更ながらひったくり犯に襲われそうになった恐怖を思い出す。

「恐かった…、本当は恐くて身体が動かなかった」
「もう大丈夫だから、此からも守るから無茶するな」
「うん…」

 南山の胸に顔を埋めると、南山は私の背中を優しく撫でる。

 普段は自信家で気難しい所もあるけれど、こうして優しい部分があるから、南山のことを改めて好きだなって、恋人で良かったって思う。

 私は南山を見上げると、南山は目を細めてうんと優しい眼差しでいた。

「……」
「……」

 自然と顔が近づいて瞼を閉じると、唇が重なった。

 お互いを想いあうキスは、愛しさと切なさが含んでいて、深さをましていく。

 息継ぎをしようと唇を離してもまた重なって、寒空の下、私たちはずっとキスをし続ける。

 私も南山を守れるように頑張るから…、そう誓いをたてながら、南山の温もりを感じていた。





【東雲沙紀side終わり】


→お次は南山目線
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