AfterStory~彼女と彼の話~
今日は四つ葉出版社が冬季休暇に入る前の出勤日で、明後日は大晦日だ。
四つ葉出版社のビルに入ると、ロビーでは総務課の人たちが慌ただしく駆け回っている。
「課長、餅が届きましたがどちらに運びますか?」
「星野さんはあっちに運んで!」
「もー!どうしてこんなにも餅が大量に届くんですか?」
「私たちは便利屋じゃないんですよ!!」
「社長と高坂さんが年始用に配るみたいだから、お手伝いしなくちゃいけないでしょ?」
総務課の人たちはぎゃあぎゃあと言い合いながらロビーを駆け回っていて、高坂さんは相変わらず無茶な頼みをしたんだと思うと、クスッと笑えてしまう。
私は2階の編集部に入り、タウン情報部に向かったら姫川編集長がいた。
「おはようございます」
「ああ。今日は午前で終わらせるから、そのつもりで」
「はい。再来月の表紙とそれに使う文字のレイアウトですが―…」
姫川編集長と共に仕事納めをし、何とか無事に原稿のデータを印刷会社に送ることが出来た。
「何とか終わったな。お疲れさん」
「はい。今年はタウン情報部に異動して、姫川編集長には沢山のご指導をいただきました」
「本当だな」
「……良いお年をお迎えください」
最後まで口調がキツイままで、来年はもう少し優しくしてもいいのにと思うけど、もうこれはしょうがないと思うしかないよね。
「……海斗にもヒデ子婆ちゃんにも宜しくと伝えてくれ」
「はい!お先に失礼します」
「んっ」
やっぱり姫川編集長は優しいなと思って姫川編集長に頭を下げて、私は四つ葉出版社を出ていく。
もう少しで海斗さんに会える!とお泊まりの荷物を片手に電車を乗り継ぎ、宇ノ島へと目指す。
電車の窓からは海が見えて、あの海原で今も海斗さんが漁をしてると思うと、無事に帰ってきて欲しいと思った。
宇ノ島について、私は海斗さんとヒデ子婆ちゃんが住む家に向かう。
坂道を歩き、ようやく家が見えてきて玄関のチャイムを鳴らすと、玄関の引き戸が開いてヒデ子婆ちゃんが出迎えてくれた。
「ヒデ子婆ちゃん、こんにちわ」
「おやぁ、よく来たね。さっ、寒いからあがって」
「お邪魔します」
今は冬で寒いけど、太陽のようなヒデ子婆ちゃんの笑顔に心が温かくなる。
いつも泊まらせていただく時に使う和室に入り、荷物を置かせてもらった。
「ヒデ子婆ちゃん、ご飯のお手伝いをさせて下さい」
「分かったわ、こちらでやりましょう」
私たちは、台所で食事の用意を始める。
「この魚を使うわよ」
「わぁ…、スーパーで見るよりも大きいですね」
「海斗がいつも新鮮な魚介類をくれるのよ」
材料は新鮮な魚介類が中心で、いつも海斗さんが漁をした時に家にお裾分けするそうだ。
ヒデ子婆ちゃんは手際よく魚を卸していき、私はその隣で内蔵を処分したり、食べやすい大きさに切る。
「この大きさで、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ」
海斗さんの方が料理が上手くて、来年はもっと私もお手伝いが出来るようにしたいから頑張らなくちゃ。
台所に美味しい香りが漂ってくると、玄関の引き戸が開く音が聞こえた。
「麻衣ちゃん、玄関に行ってちょうだい」
「はい」
私は包丁をしまって玄関に向かうと、海斗さんがいた。
「お帰りなさい、海斗さん」
「……ただいま」
海斗さんの口調も相変わらずで、口数は少ないけど口元が少し笑っている。
「もう少しでご飯が出来ますよ」
「そっか。着替えてくる」
海斗さんは靴を脱いで家にあがってスタスタと自分の部屋に向かっていき、私も台所に戻り料理の仕上げを頑張る。
「……いただきます」
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
3人で囲う食卓は温かくて、一人暮らしだと全然違う雰囲気だ。
「姫川編集長が、お二人に宜しくと仰ってました」
「兄ちゃんも元気そうだな」
「岳にも宜しく伝えてちょうだいね」
「はい」
「海斗と岳は昔の正月はね―…」
「アハハッ」
私たちは近状報告したり、年末年始の話に夢中になる。
四つ葉出版社のビルに入ると、ロビーでは総務課の人たちが慌ただしく駆け回っている。
「課長、餅が届きましたがどちらに運びますか?」
「星野さんはあっちに運んで!」
「もー!どうしてこんなにも餅が大量に届くんですか?」
「私たちは便利屋じゃないんですよ!!」
「社長と高坂さんが年始用に配るみたいだから、お手伝いしなくちゃいけないでしょ?」
総務課の人たちはぎゃあぎゃあと言い合いながらロビーを駆け回っていて、高坂さんは相変わらず無茶な頼みをしたんだと思うと、クスッと笑えてしまう。
私は2階の編集部に入り、タウン情報部に向かったら姫川編集長がいた。
「おはようございます」
「ああ。今日は午前で終わらせるから、そのつもりで」
「はい。再来月の表紙とそれに使う文字のレイアウトですが―…」
姫川編集長と共に仕事納めをし、何とか無事に原稿のデータを印刷会社に送ることが出来た。
「何とか終わったな。お疲れさん」
「はい。今年はタウン情報部に異動して、姫川編集長には沢山のご指導をいただきました」
「本当だな」
「……良いお年をお迎えください」
最後まで口調がキツイままで、来年はもう少し優しくしてもいいのにと思うけど、もうこれはしょうがないと思うしかないよね。
「……海斗にもヒデ子婆ちゃんにも宜しくと伝えてくれ」
「はい!お先に失礼します」
「んっ」
やっぱり姫川編集長は優しいなと思って姫川編集長に頭を下げて、私は四つ葉出版社を出ていく。
もう少しで海斗さんに会える!とお泊まりの荷物を片手に電車を乗り継ぎ、宇ノ島へと目指す。
電車の窓からは海が見えて、あの海原で今も海斗さんが漁をしてると思うと、無事に帰ってきて欲しいと思った。
宇ノ島について、私は海斗さんとヒデ子婆ちゃんが住む家に向かう。
坂道を歩き、ようやく家が見えてきて玄関のチャイムを鳴らすと、玄関の引き戸が開いてヒデ子婆ちゃんが出迎えてくれた。
「ヒデ子婆ちゃん、こんにちわ」
「おやぁ、よく来たね。さっ、寒いからあがって」
「お邪魔します」
今は冬で寒いけど、太陽のようなヒデ子婆ちゃんの笑顔に心が温かくなる。
いつも泊まらせていただく時に使う和室に入り、荷物を置かせてもらった。
「ヒデ子婆ちゃん、ご飯のお手伝いをさせて下さい」
「分かったわ、こちらでやりましょう」
私たちは、台所で食事の用意を始める。
「この魚を使うわよ」
「わぁ…、スーパーで見るよりも大きいですね」
「海斗がいつも新鮮な魚介類をくれるのよ」
材料は新鮮な魚介類が中心で、いつも海斗さんが漁をした時に家にお裾分けするそうだ。
ヒデ子婆ちゃんは手際よく魚を卸していき、私はその隣で内蔵を処分したり、食べやすい大きさに切る。
「この大きさで、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ」
海斗さんの方が料理が上手くて、来年はもっと私もお手伝いが出来るようにしたいから頑張らなくちゃ。
台所に美味しい香りが漂ってくると、玄関の引き戸が開く音が聞こえた。
「麻衣ちゃん、玄関に行ってちょうだい」
「はい」
私は包丁をしまって玄関に向かうと、海斗さんがいた。
「お帰りなさい、海斗さん」
「……ただいま」
海斗さんの口調も相変わらずで、口数は少ないけど口元が少し笑っている。
「もう少しでご飯が出来ますよ」
「そっか。着替えてくる」
海斗さんは靴を脱いで家にあがってスタスタと自分の部屋に向かっていき、私も台所に戻り料理の仕上げを頑張る。
「……いただきます」
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
3人で囲う食卓は温かくて、一人暮らしだと全然違う雰囲気だ。
「姫川編集長が、お二人に宜しくと仰ってました」
「兄ちゃんも元気そうだな」
「岳にも宜しく伝えてちょうだいね」
「はい」
「海斗と岳は昔の正月はね―…」
「アハハッ」
私たちは近状報告したり、年末年始の話に夢中になる。