AfterStory~彼女と彼の話~
編集部のドアが開いて、高坂さんが入ってきた。

「水瀬、ちょっと廊下にいいかな」
「今、行きます」

高坂さんは俺に手招きして、俺は席を立って、2人で編集部を出る。
また何か無茶苦茶なことを言い出すのかなと、頭によぎった。

廊下の端にくると、高坂さんは粋なり俺の首に腕を巻き付けてきた。

「高坂さん、痛いです」
「まぁまぁ」

身長差があるので、あまり長く腕を巻き付けられると苦しい。

「星野さん、具合悪くて早退したぞ」
「えっ?」

高坂さんが小声で耳打ちし、美空が早退していたなんて知らなかった。

「朝に総務課の課長に用があって部屋に行ったんだけど、その時には顔色が真っ青だったから、俺の判断で帰させた」
「そうですか…」
「咳もしていたし、風邪かもね。俺も先週は体調崩したし、お前も休んだろ?」
「今は平気です」
「何だよー、星野さんに移したのか?なぁ、どうなんだ?」
「痛いですって」

高坂さんが腕の力を強めるので、放してもらおうと腕をタップすると、高坂さんは腕をほどいたので服を正す。

先週、体調を崩して美空がお見舞いに来てくれたから、帰したくなくて泊まって貰ったんだけど、風邪を移してしまったんだな。

だから郵便物の配布を木村がしていたのかと、納得する。

「まっ、とにかく星野さんの状態を伝えたからね」
「ありがとうございます」

高坂さんは手をひらひらと振りながら、廊下を歩いていった。

俺も編集部に戻り、バックにしまっているスマホを取り出して、美空にメッセージを送ろうと画面を開いたら、1件のメッセージを受信していた。

『体調を崩してしまい、早退をして病院へ向かいます。美空』

受信した時間は昼前だから、もうそろそろ診察は終わるころだろうと、メッセージを作成する。

『高坂さんから聞いた。終わらせたらそっちに行くから、ちゃんと横になって安静してね。幸雄』

スマホをバックにしまって、また書類の山を片付けるために仕事を再開した。
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