AfterStory~彼女と彼の話~
普段慣れないことは時間がかかるなと、人参の皮を剥きながら思う。

 (切った野菜の大きさもバラバラだし、不恰好だなぁ)

四苦八苦しながら人参を切っていると、隣に美空がきた。

「お手伝いしましょうか?」
「……お願いします」
「勿論。幸雄さんはお鍋に水をいれて、コンロに火をつけてください」
「分かった」

2人でキッチンに立って、共同作業でポトフを作る。
美空はお玉でスープをすくって小皿に注ぐと息を吹いて、俺に差し出した。

「味見をお願いします」
「うん」

小皿に注がれたスープを飲むと、味に深みがあり、体が温かくなる。

「美味しいよ」
「じゃあ私も…」

美空が小皿にスープを注ぎ、口に入れると、にこりと微笑んだ。
串をじゃがいもに刺してみると、すぅっと入る。

「じゃがいもの固さもいいですね。ポトフの完成です」

美空は食器棚からスープ用のボウルを取り出して、ポトフをそこに入れていく。
俺は布巾を使ってローテーブルを綺麗にして、ボウルとスプーンを運び、向かい合って座る。

「口、開けて」

俺は先週美空からしてもらったように、スプーンに鶏肉を乗せて美空の口に運ぶ。

「……」

美空は照れながらも口を開いて、鶏肉を食べる。

「美味しいです」
「良かった。料理なんてしたことがなかったから、不安だったよ」
「上手ですよ」
「そう言って貰えて嬉しいな」

不恰好なじゃがいもを一口食べると、味が染みていて美味しい。

あっという間に食べ終え、俺が食器を洗っている隣で美空は拭こうとする。

「ベッドに横になって大丈夫だから、薬を飲みな」
「でも…」
「これくらいは出来るし、ね」
「ありがとうございます」

美空はコップに水を入れて、処方薬を飲んでベッドに横になった。
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