AfterStory~彼女と彼の話~
「そんなに俺の体が珍しいか?」
「なっ…」

南山に言われて、顔がカァッとする。

珍しいというか、恋人の体を見てドキドキするのは当たり前で、顔が熱くなっているのが自分でも分かるくらいだ。

南山は冷却シートを外してゴミ箱に捨てて、クローゼットから新しいタンクトップと長袖のTシャツを取り出して着替える。

「お粥が出来たけど、食べれそう?」
「食べる」

私たちは寝室を出て、南山はリビングのソファに座り、私はキッチンからお粥とレンゲとお箸と小鉢をお盆に載せてリビングに移動して、ローテーブルにお盆を置いて、南山の向かいに座る。

南山の膝の上には三毛猫が体を丸く縮めたままで座っていて、目を閉じて寝ている。

「猫、寝ちゃってるね」
「俺がソファに座ると、いつも膝の上にくるんだ」

南山は三毛猫が起きないように優しく頭を撫でる姿は、B警察署では絶対に見れない。

「雨で拾ったから嬉しくて、なついてるんだね」
「えっ?」
「あっ…」

あの雨の日の事を思い出したから、思わず口に出てしまった。

「俺が雨が降った日に拾ったって、何で沙紀が知っているんだよ」
「えーっと…」

動揺して視線がさ迷う。

「俺、刑事だから取り調べだって得意だぞ」
「黙秘権は?」
「駄目だ」

恋人が刑事だと、まるで取り調べを受けるみたいに感じる。

「実は―…」

私はあの雨の日、南山が傘を指さずに路上に置かれていた箱に入っていた猫を拾ったことを正直に話した。

「あれを見られてたんだ」
「うん」
「恥ずかしいな」
「でも、こうして猫とまた会えて嬉しいよ。拾った後は、どうしているか分からなかったから」
「そっか…」

2人で三毛猫に視線を向ける。

「猫、撫でてみるか?」
「大丈夫?」
「直ぐには起きないから、大丈夫」

私は南山の傍によって右手で三毛猫の頭をそっと撫でると、毛並みはさらさらしていて、手入れされているのが分かった。
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