AfterStory~彼女と彼の話~
パトカーで事件現場に到着し、山さんと一緒に店員の聞き込みを始め、手帳に細かく聞き込みした内容を書き込んでいくと、どうやら2人組の男が宝石を盗んだみたいだ。

現在、別の班が行方を追っている。

幸い怪我人がいなくてホッとするけど、最近はこの手の事件が多いように感じる。

「ったく、こんなことをしてないで働けよって思うよ」
「質屋に持ち込んで換金してないか、調べます」
「おう」

俺は小宮駅付近に数件ある質屋に聞き込みをし、逐一報告をあげていく。

「次は駅を越えた場所か」

小宮駅に通じる階段を上がると、スマホが鳴ったので出る。

「南山です」
『2人組の内1人が小宮駅に向かって走っているそうだ』
「丁度小宮駅にいるので、追います」

通話を終えてスマホをジャケットの内側にしまい、ダッシュで階段をかけ上がって小宮駅の改札前に行く。

ここは様々な路線の乗り換え駅だから、改札口前の通りは広くて人も沢山行き交うから、ぶつからないように走るなかで沙紀の言葉を思い出した。

『小宮駅前で準備があるから』

行き交う人を注意深くみながら、逃走している人物を探す。

「きゃぁ!!」
「まさかな…」

遠くで人の叫び声がして、胸騒ぎがして急いで声が聞こえた方向へ走ると、俺の視界に沙紀が犯人らしき男と揉み合いになっているのが見えた。

「しつこいぞ!」
「離すわけにもいけないでしょ?」
「ちっ」

男は沙紀を振り払うと、また走り出す。

「待ちなさい!」
「あの馬鹿!」

以前バイクで逃げようとしたひったくりを捕まえようとして、沙紀は左手を怪我したことを思い出し、急いで2人に向かって走る。

「東の―…」
「待ちなさいって言ってるでしょ?!」
「うわっ!!」

小宮駅改札口前に、水しぶきが思いっきり飛び散った。
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