AfterStory~彼女と彼の話~
宿直室に入ると、4つある内のベッドの1つだけ仕切りのカーテンがかけられていて、他は誰も使ってない。

俺はドアを閉めて、カーテンがかけられているベッドに向かった。

「東雲、起きてるか?」
「南山?」
「カーテンを開けるぞ」
「うん…」

俺はカーテンを開けると、沙紀が咳をしながらベッドに横になっていた。

「大丈夫か」
「何とか…」

沙紀はゆっくりと起き上がり、俺はベッドに腰を降ろすと、沙紀はふぅっと深くため息を吐く。

服はトレーナーで、髪の毛は少し濡れている。

「服はどうするんだよ」
「お母さんが着替えを持ってきてくれるって」
「犯人とプールに突っ込むとか、あり得ないな」
「しょうがないじゃない。飛び付いたら、プールがあるのを忘れてたんだもの」

そう…、沙紀は逃げる犯人を捕らえようと飛び付いた拍子に、ヨーヨーのプールに突っ込んでしまったのだ。

おかげでプールの水が周りに飛び散るは、2人はびしょ濡れになるわで改札口前はちょっとした騒ぎになり、野次馬を退かすにも時間がかかったし。

刑事課の皆が沙紀の行動に笑うも、俺は生きた心地がしなかった。

また沙紀が怪我をしてしまうんじゃないかと思ったし、でも沙紀も警察官として立派に仕事に打ち込んでいるのを見てきているから、内心は複雑でいる。

俺は右手で沙紀の頭を撫でると、沙紀は目を細目ながら微笑む。

「犯人、捕まって良かったね」
「沙紀のおかげだ」
「まだまだ南山には負けるよ」
「簡単に勝たせるつもりはない」
「何それ」

いつものような口喧嘩が始まるけど、お互い顔は笑ってる。

「さっき、山さんから聞いたよ」
「何を聞いたんだよ」
「南山が橋から飛び降りて、川の中を走って犯人に飛び付いたらびしょ濡れになったって話」
「あれは川の中に走る犯人が悪い」
「山さん、喜んでたよ。自分が若い時も川の中や、砂利だらけの所で確保する時に飛び付いてたんだって。それを思い出したみたい」
「そうなんだ」

 (初めて聞いたな)

「お前も南山と同じだなって笑って、何故か栄養ドリンクを貰っちゃった」

ベッドの脇に栄養ドリンクが2本、置いてある。
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