AfterStory~彼女と彼の話~
俺は栄養ドリンクの1本を手に取って、きっと山さんは休憩中にここに来たんだなと、じゃなきゃ休憩は30分の筈なのに、1時間で戻ってこいよなんて言わない筈だ。

それに栄養ドリンク1本だけでいいのに、俺がここに来るのを分かってたのか2本を置いているし、はっきりと宿直室に行けよって言えばいいのにな。

「素直じゃないな」
「何が?」
「何でもない」

俺はそっと沙紀を抱きしめる。

「無茶しやがって」
「ご免なさい」
「でも、よくやったよ。沙紀のおかげで助かった」
「うん…」

抱きしめる腕の力を強くすると、沙紀も俺の背中に腕を回す。

 (細いな…)

沙紀を抱きしめる度に体の細さを感じて、愛しくて、ずっと俺が守りたいって思うようになり、抱きしめる力を一旦緩めて、沙紀の頬を両手で包む。

「南山?」
「名前で呼んでって言ったろ」
「誰かが入ってきちゃうよ?」
「鍵を閉めたから、大丈夫」

宿直室に入ってドアを閉めた時に、鍵はかけている。

誰にも邪魔はされたくないからだ。

「沙紀、目を閉じて」
「彰、で―…」

沙紀の言葉を封じるように、キスをした。

「風邪、移しちゃ…う…」
「また見舞いに部屋に来いよ」
「んっ…」
「猫も待ってるから」
「うん」

キスの合間に言葉を交わし、刑事課に戻ったのは1時間してから。


これが、沙紀が風邪を引いた事件だった。








【南山彰side終わり】

2015/1/19up

ここまでお読み頂き、ありがとうございました!


次回もお楽しみ下さい!!
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