AfterStory~彼女と彼の話~

├愛を込めて(佐々原海斗side)

【佐々原海斗side】

愛を込めて贈るよ



今日も波に揺れながら網を海に放り、魚を捕まえる。

「っくしゅ」

2月になっても寒く、この間は雪が降る中での漁は体に堪えたな。

「そろそろ網を引き上げるぞー」

船長の号令で皆で網を引き上げ、魚の大きさを区別しながら保管用の大きい水槽に入れる。

 (手袋しても冷たいな)

ゴム手袋を着けても海水の冷たさが伝わり、眉をしかめながら網をまた海に放った。

「これでよしっ…、と」

また引き上げる時まで時間があるから、少し休憩しようと船の後ろで横になり、空を見上げる。

 (元気でいるかな)

正月以来、麻衣に会っていないし、連絡をしようも一度漁に出てしまえばする暇がない。

「兄ちゃんが羨ましい…」

ポツリと本音が出た。

俺が漁に出ている間、俺の兄である岳は麻衣と一緒に仕事をしているから、俺よりも過ごす時間が多くて羨ましく思う。

でも麻衣が忙しい合間をぬって俺に会いに来てくれるのが嬉しくて、俺って単純なんだな。

「よーし、網を引き上げるぞ」
「よっ」

体を起こし、また皆で網を引き上げいくと、魚が大量に捕まっていたので今日の売り上げも良さそうだ。

数時間かけて漁港に戻り、直ぐに競り用と取り引きをしている料亭や魚屋に卸す用に仕分けていく。

「海斗、こっちのデカイのは競り場に持っていけ」
「はい」

船長に頼まれ、魚に競り番号のシールを貼り付けて競り場に運ぶと、競りに参加する人たちが寄ってきた。

「こりゃ大物だな」
「うちが貰いますよ」
「お前の所には落とさせないよ」

皆はメモ帳に競り番号を控えて、また別の魚を見て回る。

この日の競り場は大盛り上がりで、俺たちが吊り上げた魚は殆ど競り落とされた。
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