AfterStory～彼女と彼の話～
夕方になり、漁港を閉めるために水で床を濡らしてブラシで掃除をし始めていると、先輩の漁師がきた。

「海斗、久しぶりにご飯を食いにウチにこないか？嫁の料理は上手いぞー。たまには付き合えよ」

　（ここで行かないって言ったら五月蝿く言ってくるし、付き合うしかないか）

俺は断ろうとしたが、後々のことを考えて行くことにした。

「分かった。夕飯は食べてくると、ヒデ子婆ちゃんに電話でいってくる」
「じゃあ漁港を出た所で待っているから」
「ああ」

先輩は先に漁港を出ていき、俺は掃除を終えるとヒデ子婆ちゃんに連絡して帰りが遅くなることを伝え、先輩の家に行った。

先輩の家は雑貨屋で、奥さんがこの店を切り盛りしている。

「海斗君、いらっしゃい！」
「お邪魔します」
「麻衣ちゃんは元気？」
「元気ですよ」

麻衣が仕事でこの雑貨屋を取材して雑誌に取り上げたらしく、それ以来、麻衣と奥さんはとても仲が良い。

雑貨屋に入り居間に繋がるドアを開けて、靴を脱いで居間にあがった。

ちゃぶ台があって、奥さんが作った料理が沢山乗っている。

俺たちはちゃぶ台を囲むように座り、俺はアルコールの瓶を持って先輩のグラスに中身を注ぎ、奥さんと自分にも注いで乾杯をした。

そして料理を食べながら、漁の話をしたり、他愛ない話をしながら過ごす。

「海斗はまだ結婚はしないのか？」
「付き合ったばかりだから、まだ考えてない」
「俺なんて出会った時にコイツだ！って思って、会うたんびに好きだ！愛してる！！って言ったぞ」

先輩は顔を真っ赤にさせながら絡んでくるから、段々鬱陶しくなってくる。

「あんた、海斗君には海斗君のペースがあるんだから。海斗君は気にしないでね」
「はい」

俺は酔っ払っている先輩の話を聞き流しながら、ご飯を食べた。
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