AfterStory~彼女と彼の話~

├愛の味(南山彰side)

【南山彰side】



愛の味は、ヒミツだ



「南山さん、こんにちわ」
「いつも事件を解決して、素敵です」

2月に入ってから頻繁に婦警から声をかけられるが、なんなんだ。

事件なんて俺よりも先輩や山さんの方が解決しているし、俺なんてまだまだで、声をかけてきた婦警なんてよく知らないし、素敵だなんて言われても困る。

「もうすぐバレンタインだな」
「義理チョコでもいいから、1つは欲しいよな」
「俺は逆チョコで攻めてみたいと思います」

今は事件が発生していないので、刑事課の自分の席で報告書の作成や調書資料を纏めていたら、先輩たちは雑談をしながら報告書を書いている。

 (くだらない)

義理チョコなんて社交辞令だし、貰ったって嬉しいとは思えない。

「山さんは、若い頃はかなり貰ってたんじゃないですか?」
「俺はカミサンのだけしか貰わねーよ」
「意外ですね」

それは俺も先輩と同感だなと思いながら、ペンを走らせる。

「署内でチョコを貰ってみろ、返しがないだのでめんどくさいから、カミサンので充分だ」
「……」
「……」

山さんの言葉に刑事課は静寂に包まれ、俺は山さんのことを少しだけ尊敬した。

俺も貰うなら沙紀のだけで満足だし、今年は付き合って初めてのバレンタインを迎えるから、渡しにくる人には断ろう。

「南山、見回りいくぞ」
「はい」

山さんと一緒に車に乗り、俺の運転で管轄内の見回りをしていくと、街中はバレンタインの装飾が目立っていた。

「どこもバレンタイン、バレンタインってはしゃぎすぎだな」
「俺は山さんがチョコを奥様からしか貰わないって、初めて知りました」
「まぁ…、カミサンがぶーたれるのをみたくないからな」
「そうなんですか?」
「案外女って嫉妬深い所もあるから、お前も東雲にぶすっとされたくなきゃ、しっかり断れよ。最近お前について婦警からあーだこーだ聞かれて、うんざりだ」
「言われなくても、断りますよ」
「ならいい」

断るに決まっているし、もしかしたら沙紀も俺が受けとるだなんて思ってもないよな。
< 98 / 165 >

この作品をシェア

pagetop