意地悪姫の反乱
一家の晩餐は全員揃って始まる。
時間はしっかり決まっているし皆滅多に遅れる事はないが珍しくティア姫が遅れて来た。
「遅いわよティア。もう待ってらんないわ」
「悪かったわ…」
第二皇女ミザリーが文句を言うとティア姫が素直に謝った。
いつもは毒の一つ二つ吐く姫なのでミザリーは驚いて黙った。
そして晩餐が始まる。
ここのところずっとティア姫は元気がなかった。
日に日に沈んでいくので気にはなっていたがこの日はもう一家全員が気付いていて、どう声を掛けていいか分からずに静かな食事が続く。
息が詰まる。パラレウス皇子が気まずい空気を感じながらスープを飲んでいるとふと視線を感じて顔を上げる。
ティア姫以外の家族全員と目があった。
「……」
つまりここは兄として皇子として口火を切れということか。
第一皇子パラレウスはごくりとスープを飲み込みティア姫に目を向ける。
「……ティア…最近どうだい?」
「何がです?お兄様」
「魔法使いの塔に入り浸っているのだろう?またなにか珍しい新薬などを開発したのかな?」
「……そんなことをお聞きになってどうなさるの?分けてなんて上げませんよ。
まあ新薬は出来ましたけど」
「…別に分けてほしい訳じゃないが……出来たのか……」
皇子はショックを受ける。また犠牲者が出ると思うと切ない。
皇子の様子に溜め息をついたアリシア姫がティアに声を掛ける。
「ティア、何かあったの?元気がないって皆心配しているわ」
「何もありません。ちょっと疲れただけです」
「パーティの準備は出来て?ダンスのお相手は決まった?」
「どうでもいいわ。相手なら身近で適当に決めるからいい」
「まあティア、それはだめよ。何のためにレッスンしているの。ちゃんと相手を決めてお誘いしないと」
「興味ないわ」
「そんなことを言うなら私が決めてしまうわよ?それでいいの?」
「構わないわ、何でもいい」
王と王妃が心配そうに顔を見合わせている。アリシアは困ったようにティアを見つめる。
ティアはぼんやり生気のない顔をしている。
「…本当に何もないのか?」
さすがに皇子も心配になった。
「何もないわ。……食欲ないから先に下がらせていただくわ」
ティアは席を立つ。
「ティア、あとで私の部屋にいらっしゃい。話があるわ」
「わかりました」
アリシアの言葉にティアは無気力に返事をした。