On My Beat
Beat#1 every day
「行ってくるよ」 真っ青な作業服に身を包み玄関に横たわる愛犬(ボス)に声を掛ける。午前5時半。妻と子供はまだ布団の中。「また今日が始まるよ、15年以上何も変りゃしないよ」 つぶやく独り言に(ボス)は横たわったままの姿勢で視線を向けた。

「申し訳ございません」 部下の不手際に、額が床につくのでは?と思うほど取引先に頭をさげる。「なんかペコペコしてさ、コメツキバッタみたいじゃね?」「あんな風になりたくないね~」 普段は足を運ばない、第二工場のトイレから部下のせせら笑う声がした。「お前達のせじゃないか!」 言いかけた言葉を腹の底にしまい込みトイレに入る。「次は気を付けろよ」冷静を装った私の言葉に「はぁ、どうも」 謝る事もできない、やる気のない返事が私に向けられた。

「ただいま」 出迎えてくれるのは(ボス)だけ。しかし横たわったままである。
着替えをすませビールを口に運ぶ。その私のおよそダンディとは似つかない三段腹を摑み子供が笑い転げる。「ここ、何がはいってんの?」 私の腹にはウップン以外何が溜まっているんだろう?
<パパだって昔は・・・>誰も信じない武勇伝?を語り始めるとほどなく妻の怒声でかき消される。「宿題はできたの?」

至って普通の一日が音もなく流れていく。
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