俺のバカな後輩
それから何度か武井に話しかけられる。
それも、毎回何かを躊躇っては時間をとり、結局言わない…っていう繰り返し。
さすがにめんどくさくなってきたその日、覚悟を決めたような顔をした武井は口早に言った。
「1年近く前の、壁越えてきた女の子覚えてますか!?」
言い切ったことで、少し息を切らしている。
………武井はこれを聞きたかったのか。
思い浮かぶのは、随分前に見た、武井に向かって顔を赤くしながら話していたあの姿。
「……さぁ」
素直に、うん。なんていうのは癪で誤魔化せば、武井は残念そうに去っていった。