古本屋のあにき
あの事故から涼介に会うのは初めてだった。
 
病室をちらっとのぞくと、たくさんの女の子から花が送られていた。入院してもモテモテなのは変わらないらしい。
 
そうか、花。見舞いって花がいるんだっけ。今から買いに行くか?いや、せっかく来たし、顔だけ見て帰るか……いや、店のことで来たんだ。見舞いじゃねえし……。
 
いろんなことを考えていたら、中から声がした。
 
「そこにいるの健だろ?入って来いよ。まだ頭動かせねんだ」
 
「あ、ああ」
 
 こっち向けないのに俺ってばれてやがる。健はそんなことを思いながら、そっと病室に入った。
 
「お前、やっと来たな」
 
 顔合わせづらかったとはさすがに言えない。
 
「店は?どうしてる?」
 
「ああ、俺も学校があるから、昼は開けらんねえけど、夕方から開けてるよ」
 
「開けてくれてんだ!すげえな」
 
「ま、まあな」
 
「あの棚は?」
 
「撤去したよ」
 
「わりいな」
 
「な、何言ってんだよ!もとはと言えば、俺があんなところに脚立置いたまま、トイレになんか……!」
 
「健、……健!ちょっと顔見せろよ。言ったろ?頭動かせねぇんだよ」
 
「あ、ああ……。」
 
 健は涼介のそばに行き、顔を覗き込んだ。
 
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