星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

14.寄り添う時間 -託実-



九月下旬。

彼女のお祖父さま公認で
何度か、同じ時間を重ねるようになった。


今も11月のピアノコンクールに向けて、
猛練習中の雪貴。


そんな雪貴と共に寄り添っているのは、
雪貴の想い人であり、学校の講師・唯香ちゃん。


唯香ちゃんの自宅マンションに
何度も足を運んでいる雪貴を知っている。


TAKAの秘密を守りながら、
それに苦しみ続ける雪貴に解放してやることも叶わない。


だからこそ、俺が隆雪の代わりに出来るのは、
アイツがマスコミに寄って誹謗中傷を受けることがないように
アイツの周囲の警備を厳重にしていくことだけだった。


それらの警備に尽力してくれるのは、
十夜の傘下に名を連ねる会社。


そして宝珠姉が、事務所を通して依頼した
強いパイプが繋がっている、早谷グループの警備部。

裕兄さんや裕真さんたちの後輩で、
宝珠姉のフィアンセ、高臣会長の親友が力を貸してくれている。


宝珠姉を通して、雪貴や祈たちの情報を把握しながら
俺自身も警備の気配を感じながら、
マンションと事務所の往復の間に、
時折百花ちゃんとの時間を重ねていた。



かといって白昼堂々と、
雪貴と唯香ちゃんの様にスーパーに買い物に行くことはない。


雪貴と唯香ちゃんの場合は、教師と生徒と言う関係が成立する。
ましては、今は雪貴のピアノコンクール前。

なんとでも口実は作れるだろう。

だけど……俺の場合は、
間違いなく一般女性の彼女を巻き込んでしまう。


そんな風に考えてしまう、臆病な俺は裕兄さんや十夜の子愛に甘えて、
系列グループのホテルやレストランで逢瀬を重ねつづけていた。
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