星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
多分……この感情は、
嫉妬に近いのかもしれない。
そんなことを考えてると、言葉にすることが出来なくて
沈黙のまま、車はお寺の駐車場へと辿り着いた。
「お水も持って行かないといけないよね。
ついていこうか?」
車を停めて声をかける託実。
だけど……この場所には「託実の大切な人が眠ってる」。
そう思うと、一緒について来て欲しいとは言えなかった。
託実と一緒に居る時間は増えても、
私たちの関係は何?って聞かれたら答えれない。
恋人同士のデートって思いたいのは私のエゴ。
本当は違うかもしれない……。
だったら、お姉ちゃんにどうやって紹介していいかなんてわかんない。
「託実さん、ごめんなさい。
お気持ちは嬉しいけど、今日は一人で行きます。
すぐに戻ってくるので、申し訳ないですけど待っててください」
そのまま鞄を残して、花束を抱えてお姉ちゃんのお墓へと向かう。
途中、携帯で水を汲んで運ぶのは忘れずに。
陽が落ちた墓地で慌てて、
花をさして新しい水を杓子で足すとゆっくりと手を合わした。
*
お姉ちゃん、今日は遅くなってごめん。
仕事で少し出張に行ってたの。
今からもデートでいいのかな?
凄く一緒に居るだけで安心出来る人と過ごすの。
お姉ちゃんにずっと話してた、
私の憧れの人だよ。
その人が待ってるから、今日は行くね。
またゆっくりと陽が高い時に来るから。
*
そう言って報告を済ませて、
水桶を返し、託実の元へと走りだす。
「お帰り。
お姉さんとは、ゆっくりと話せた?」
「はい。
いつも私の心が整頓できたら、
託実さんにもお姉ちゃん紹介しますね」
「有難う。
んじゃ、いつものようにアメジストホテルに行こうか?」
「はいっ。
私、お腹すいちゃいました。
今日、お昼ご飯殆ど取れなくてスティックバーを半分かじっただけなんです」
「じゃ早く行かないとね」
そう言って、車を走らせた託実は
何時ものアメジストホテルのエントランスへと車を横付けした。
「亀城様、喜多川様、お待ちしておりました」
いつもの様に丁寧に迎えられた私たちは、
エントランスから、佐喜嶋総支配人に案内されて
何時もの部屋へと通される。