星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

17.想い人を知った日 -百花-



「百花ちゃん、次に逢えるのは多分、
 11月3日かな。

 雪貴のピアノコンクールがあるんだ。

 雪貴を教えてくれてるのは、
 唯香ちゃんだから……」



そうやって託実さんが、次回の約束を取り付けてくれた
前回のデート。

雪貴君が託実さんと関係のある人だって言うのは初耳。


デートの日の翌日、
私は久しぶりに唯香のもとを訪ねた。


教え子が全国大会に出るピアノコンクール。

さぞかし、
唯香も緊張してるかも。




そう思いながら押しかけたマンションの唯香の部屋から
灯りが零れる。



居るのを確認して、車内から唯香の携帯へコール。



「はいっ」

「唯香、久しぶり。
 最近、お互い擦れ違ってばっかで逢えなかったから、
 今日は居たらいいなーくらいで、来ちゃったんだ。

 今、マンションの下にいるんだけど、
 行ってもいいかな?

 雪貴君いよいよコンクールでしょ。
 邪魔だったら帰るけど」


「別にいいよ。
 宮向井君は此処にはいないし。

 それに私……彼に教えられることなんてないから」


そう言いながら唯香は、
言葉を詰まらせた。




えっ?



予想外の展開?
唯香とあの少年、順調だったんじゃないの?




「唯香、今すぐ行くから。
 ちゃんと話聞かせて」



それだけ告げると、マンションの来客用の駐車場へと車をとめて
唯香の部屋に続く階段をかけあがる。

チャイムを鳴らすと、
パジャマ姿の唯香が姿を見せた。
< 117 / 253 >

この作品をシェア

pagetop