星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】


「マスコミへは、
 速報と言う形でTakaの死が公表される形になりました。

 この場所にファンが押しかけてくる可能性もあります。
 至急、警備の手配を整えます」

「警備は手配済み。紀天に一本連絡させた。
 すぐに瑠璃垣の警備が駆けつける」

「伊吹、有難う。
 次にAnsyalの記者会見。
 託実、伊吹・紀天・祈と共に任せたよ。
 雪貴は様子を見ながら参加」

「次、お通夜と告別式。
 通夜が12月26日……告別式が……」


その後も、打ち合わせは続き
次々と話し合われる言葉も
思う様に俺の中には入ってこない。


ようやく俺が伝えられた言葉は、
理佳の時と同じ……。


隆雪の最期も音楽で送りだしてやりたいから……。



「おじさん……
 隆雪をAnsyalの曲で送り出してもいいですか?

 出来れば音楽葬に……」



『おじさん……
 理佳を俺たちの音楽で送りだしてもいいですか?

 アイツが教えてくれた音楽で……
 アイツの旅立ちを見送ってやりたいんです』




遠い昔の言葉が……リフレインを続ける。


「託実くん、それで構わないよ。

 むしろ、隆雪もそれを望んでいるだろう。
 あの子は本当に音楽が好きで、ギターが好きで、Ansyalが大好きだった」


おじさんの許可を貰った後、
今度はメンバーで、告別式の日に演奏する曲を話し合う。



そんな瞬間も、俺には隆雪を失った重圧がのしかかる。

覚悟をしていたつもりだった……だけど、
本当の覚悟は何一つ出来てなかった。


最上階から、十夜たちと別れて隆雪の病室へと慌てて向かうと
そこにすでに二人の姿は居なかった。

霊安室に移されたのだと思い慌てて、
霊安室へと向かうがそこにも雪貴の姿はない。


霊安室には、処置が終わって落ち着いたらしい
唯ちゃんが、体を小さくして隆雪の傍に座ってた。



院内にいない?
外か?


慌てて関係者口から病院の外へと飛び出すと
すでに真っ黒な服を着て集まってきたファンの子たちと
マスコミ各社が集まってきている。



行方がわからない雪貴を探しながら、
もう一人の行方不明者。

実夜のことも気にかける。


実夜の傍には、美加がついているだろうと思いながらも
今ある問題を一つずつ片付けていくのが精一杯で。

何度も定期連絡が入る携帯。

その電話を取りながら、関係者の病院出入り口の方へと足を向けると、
そこからゆっくりと顔を覗かせたのは雪貴。

「お帰り。雪貴」

「さっき、事務所を通して隆雪の死を速報して貰った。
 今から、俺たちは記者会見に行ってくる。

 雪貴は、隆雪の傍にいてやりな。
 アイツ、凄く穏やかに眠ってるよ」


それだけ伝えると雪貴以外のメンバーと合流して
記者会見に臨む。


全てを明らかにするために。


喪服を着用した十夜・祈・憲……そして俺の四人。


フラッシュライトが光る小さな部屋。
俺たち四人は静かにマスコミたちの前に座っていた。

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