星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
「マスコミへは、
速報と言う形でTakaの死が公表される形になりました。
この場所にファンが押しかけてくる可能性もあります。
至急、警備の手配を整えます」
「警備は手配済み。紀天に一本連絡させた。
すぐに瑠璃垣の警備が駆けつける」
「伊吹、有難う。
次にAnsyalの記者会見。
託実、伊吹・紀天・祈と共に任せたよ。
雪貴は様子を見ながら参加」
「次、お通夜と告別式。
通夜が12月26日……告別式が……」
その後も、打ち合わせは続き
次々と話し合われる言葉も
思う様に俺の中には入ってこない。
ようやく俺が伝えられた言葉は、
理佳の時と同じ……。
隆雪の最期も音楽で送りだしてやりたいから……。
「おじさん……
隆雪をAnsyalの曲で送り出してもいいですか?
出来れば音楽葬に……」
*
『おじさん……
理佳を俺たちの音楽で送りだしてもいいですか?
アイツが教えてくれた音楽で……
アイツの旅立ちを見送ってやりたいんです』
*
遠い昔の言葉が……リフレインを続ける。
「託実くん、それで構わないよ。
むしろ、隆雪もそれを望んでいるだろう。
あの子は本当に音楽が好きで、ギターが好きで、Ansyalが大好きだった」
おじさんの許可を貰った後、
今度はメンバーで、告別式の日に演奏する曲を話し合う。
そんな瞬間も、俺には隆雪を失った重圧がのしかかる。
覚悟をしていたつもりだった……だけど、
本当の覚悟は何一つ出来てなかった。
最上階から、十夜たちと別れて隆雪の病室へと慌てて向かうと
そこにすでに二人の姿は居なかった。
霊安室に移されたのだと思い慌てて、
霊安室へと向かうがそこにも雪貴の姿はない。
霊安室には、処置が終わって落ち着いたらしい
唯ちゃんが、体を小さくして隆雪の傍に座ってた。
院内にいない?
外か?
慌てて関係者口から病院の外へと飛び出すと
すでに真っ黒な服を着て集まってきたファンの子たちと
マスコミ各社が集まってきている。
行方がわからない雪貴を探しながら、
もう一人の行方不明者。
実夜のことも気にかける。
実夜の傍には、美加がついているだろうと思いながらも
今ある問題を一つずつ片付けていくのが精一杯で。
何度も定期連絡が入る携帯。
その電話を取りながら、関係者の病院出入り口の方へと足を向けると、
そこからゆっくりと顔を覗かせたのは雪貴。
「お帰り。雪貴」
「さっき、事務所を通して隆雪の死を速報して貰った。
今から、俺たちは記者会見に行ってくる。
雪貴は、隆雪の傍にいてやりな。
アイツ、凄く穏やかに眠ってるよ」
それだけ伝えると雪貴以外のメンバーと合流して
記者会見に臨む。
全てを明らかにするために。
喪服を着用した十夜・祈・憲……そして俺の四人。
フラッシュライトが光る小さな部屋。
俺たち四人は静かにマスコミたちの前に座っていた。