星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

「えぇ。

 深夜遅い中、今日は皆様にお集まり頂きまして
 有難うございます。

 先ほど、FAXで発表しました通り本日……
 正式には昨日12月24日、20時40分。

 Ansyalギターリスト、Takaが病気の為、他界しました」


『Takaさんが入院したのは何時の事ですか?』

『AnsyalのTakaは二人いるとの噂がありますが……』

『違いますよね。真実を話してください。
 Takaは二人いるんですよね。
 
 今回、急逝したのは……作曲担当のTakaですか?
 演奏担当のTakaですか?』


次々に飛び交うマスコミからの言葉に
次に言葉を紡ぐタイミングが計れず戸惑う俺の隣。


十夜がマイクを握る。


「すいません。
 少しオレらに時間くれますか?

 今、知りたいことを、これからリーダーが発表する中に
 あると思うんで」


十夜の言葉に会場内がシーンと静まり返る。


マイクが再び、俺に握らされる。  

俺はゆっくりと深呼吸をして、
真っ直ぐにカメラを捉えた。


「その情報は間違いです。
 Ansyalに、Takaは一人しかいません。
 
 正確には……、Takaの想いを受け継いだ、
 Ansyalに絶対の存在。Takaの半身はいます。
 
 メジャーデビュー1周年記念となった聖夜。
 
 俺たちと一緒にバンドを作ったTakaは
 会場に来る途中に交通事故にあい、
 その日から入院生活を余儀なくされました。
 
 そんな俺たち、メンバーを支えてくれたのは
 Takaの弟。
 
 もう一人のTakaの存在です。
 
 Takaが目覚めた時に帰れる場所があるようにと、
 Takaの想いを受け継いだ、Takaの半身は
 この夏のツアーまでTakaの意思と共に走り続けてくれました。
 
 Ansyalは、Takaの想いを受け継ぐ、
 弟に支えられて今日まで夢を見続けることが出来ました。
 
 明日のお通夜・27日のTakaの告別式を最後にAnsyalは活動休止に入ります。
 活動休止に入ります。
 

 俺たちに、これからの未来を
 考える時間をください。
 
 
 そして……最後に……。
 
 Takaを思い続けるTakaの大切な
 ファンの皆さんに俺たちからのお願いです。
 
 この事で、ファン同士が言い争いを行わないように
 気を付けてください。
 
 そして……Takaの後を追うなどの、
 Takaを悲しめる行為を決してしないでください。
 
 俺たちは今日まで、
 2つの心のTakaと最高の夢を見てきました』



淡々と伝えるべきことだけを伝えて、
俺たちはその場所を後にする。


その後、一度私服に着替えて、
隆雪の告別式の会場へ向かい事務所から運び込んだ
機材のセッティング。


告別式の演奏の準備を整えながら、
お通夜を終えて、最終調整を続ける。

一睡も眠ることないままに朝を向かえ、
告別式当日の朝、雪貴を迎えに会場入り口前へと
喪服に着替えて顔を覗かせる。


予想通り、すでに雪貴はマスコミの奴らに
囲まれて身動きがとれなくなっている。


警備員をつれて、雪貴を救出後会場内で最後の練習。
最高の音で隆雪を見送ること。

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