星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
19.セピアの写真 -百花-
11月3日。
唯香と一緒に出掛けた雪貴君のピアノコンクール。
その日の夕方、お墓参りに出かけた私は
残酷な真実を知った。
私の最大のライバルは、
大好きな理佳お姉ちゃん。
ずっと託実を追いかけて、
託実が想っている大切な人に嫉妬してた醜い私。
最初から手に届かないと知りながらも、
託実が天界から、下界に降りてきてくれるから
その夢の中に溺れ続けた。
そんな甘い生活がピリオドを告げたあの夜。
あの日から私の時間は凍り付いたように固まった。
お墓から逃げ出すように駐車場へと向かい、
車を発進させた私は、満永の自宅へと車を走らせていた。
満永の自宅なんて、
遠い昔に私の居場所ではなくなったはず……。
合鍵なんて持ってないから、
遅い時間にも関わらず、私は玄関のチャイムを鳴らす。
「はーい」
スピーカー越しに聞こえてくるのは、
お母さんの声。
「モモです」
何も言葉に出来なくて、
ようやく紡げたのは名前。
「百花?
お父さん、百花が帰って来てるわ」
そんな声が聞こえた後、
すぐに玄関の扉が開く。
「百花、どうしたの?
こんな時間に……」
駆け寄ってくるお母さん。