星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
「百花、こんなに体を冷やして。
早く家の中に入りなさい」
支えられるように満永の家へと入った私は、
そのままストーブの前へと座らされた。
「百花、ホットミルクいれたわ。
少し体が温まるでしょう?」
そうやってお母さんが、私の傍のテーブルへと
マグカップを置いた。
そのマグカップには、【Momoka】とアルファベッドで
名前が綴られている。
「何があったか知らないけど、
お祖父ちゃんには電話しておくわ。
百花が好きなだけ、この家に居なさい。
今はお父さんも、お母さんも何も聞かない。
落ち着いたら話してちょうだい。
百花の部屋もずっとあるのよ。
お父さんに案内して貰って」
そう言ってお母さんは、
何処か別の部屋へと移動していく。
実家に帰ってきたはずなのに、
自宅のような気がしないのは、
この家で住んでた記憶があまりに乏しいから。
そんなことを思いなから、
私はホットミルクをゆっくりと飲み干していく。
「百花、少し温まったか?
百花の部屋に案内しよう」
そう言ってお父さんは、私をゆっくりと立ち上がらせると
二階へと誘導していく。
二階にある4つの扉。
「百花、トイレは右奥のドア。
階段あがって、正面の部屋が理佳。
その隣が、お父さんとお母さんの寝室。
その隣が、百花の部屋だよ。
何か足りないものがあれば、すぐに言いなさい。
今日はゆっくりと休むといいよ」
慣れない両親の優しさが、
心に痛みを感じる。
こうやって両親が私に優しくしてくれるのも、
お姉ちゃんが天国に旅立ってしまったから?
幼い時の記憶の両親は、
いつもお姉ちゃんにばかりかかりきりで、
私はいつも、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに
預けられっぱなしだった。
ドアを開けて入った私の部屋は、
私の部屋と言う実感は何一つないけど、
それでもベッドやクローゼット、そしてテーブル。
クローゼットを開くと、
一通りのランジェリーや洋服がつるされてる。