星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
そんな部屋の洋服たちを見つめると、
私の好みかどうかは別として、
私の存在が受け入れられているのは実感できる。
その日……眠れなくなる自分自身を自覚して、
意識を手放すように、市販の睡眠薬を口に含んだ。
翌日、まだ残る薬の副作用。
気怠さと疲労感が私を包み込む。
「百花、起きた?
お祖父ちゃんの画廊に仕事に行かなくていいの?」
そう言いながら入り込んでくるお母さん。
「ごめん……今日は無理みたい。
体が動かない……」
ようやくの思いでそれだけ告げると、
再び私はベッドに体を預けた。
次に起きた時、お祖父ちゃんに携帯から連絡して
暫く休ませてほしいと伝える。
*
私が好きな託実は、
お姉ちゃんの恋人でした。
*
社会人としては甘えてるって言うのはわかってる。
だけど……今の私は、
何をする気にもなれないから。
満永の私の部屋に引き籠って、
カーテンも閉め切って、ベッドで眠りを貪る。
そして両親が出かけて居なくなったら、
私は……ふらふらと、
お姉ちゃんの部屋と教えられたその場所に彷徨う。
お姉ちゃんの部屋と教えられたその場所には、
私の知らないお姉ちゃんの病室での写真が
コルクボードや写真縦に収められていた。
グランドピアノの譜面立てところに飾られているのは、
病院のピアノを演奏しているお姉ちゃん。
コルクボードに飾られている写真は、
あっ……この人、夏に唯香を最初に助けてくれた人……。
記憶を掠める顔を見つけて、
その写真立てに手を伸ばしてフレームから取り出す。
*
20××年4月
理佳の病室にて。
主治医の亀城宗成先生と
*
亀城?
この苗字って……託実と同じ……。
ふいに玄関の扉がカチャリと開く。
「ただいまー。百花?」
私の名を呼びながらあがってくるお母さんは、
開けっ放しになってる、お姉ちゃんの部屋へと姿を見せた。