星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】


「百花、理佳の部屋に居たのね」


あらっ、懐かしい写真。




そう言いながら私の手から、
お姉ちゃんと、亀城先生の写る写真をスルリと抜き取って
フレームの中へとおさめた。





「この写真はね、理佳の主治医の先生と一緒に、
 あの子の誕生日に撮影したものよ。

 最初の先生には、そんなに生きられないって告知されてたのに
 理佳はちゃんと頑張ってくれてた。

 そんな理佳の記念日に撮影した写真。

 この年から、
 理佳は少しずついろんな顔を見せてくれるようになったのよ。

 宗成先生の息子さんが、理佳の病室に同室してきて……
 確か、託実君って言ったかしら?」





……託実……。






それだけは聞きたくなかった。



どれだけ事実だと知っていても、
核心に迫りたくなかった。




「ごめん。
 出掛けてくる……」




泣いてる顔を見られたくなくて、
お母さんを振り切るように、
鞄だけを掴んで玄関から飛び出す。



愛車に乗って彷徨う街中。




商店街をブラブラとぶらついて、
ふと視線を向けた電気屋の巨大テレビ。


< 132 / 253 >

この作品をシェア

pagetop