星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
「百花、理佳の部屋に居たのね」
あらっ、懐かしい写真。
そう言いながら私の手から、
お姉ちゃんと、亀城先生の写る写真をスルリと抜き取って
フレームの中へとおさめた。
「この写真はね、理佳の主治医の先生と一緒に、
あの子の誕生日に撮影したものよ。
最初の先生には、そんなに生きられないって告知されてたのに
理佳はちゃんと頑張ってくれてた。
そんな理佳の記念日に撮影した写真。
この年から、
理佳は少しずついろんな顔を見せてくれるようになったのよ。
宗成先生の息子さんが、理佳の病室に同室してきて……
確か、託実君って言ったかしら?」
……託実……。
それだけは聞きたくなかった。
どれだけ事実だと知っていても、
核心に迫りたくなかった。
「ごめん。
出掛けてくる……」
泣いてる顔を見られたくなくて、
お母さんを振り切るように、
鞄だけを掴んで玄関から飛び出す。
愛車に乗って彷徨う街中。
商店街をブラブラとぶらついて、
ふと視線を向けた電気屋の巨大テレビ。