星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
そのままTVに映し出されていたお寺へと、
車を走らせる。
だけど会場周辺は警察官や、
警備員が一メートル置き位に配置されて
近づくことも出来ない。
託実に……一目会いたい……。
そう思うものの、
その願いは叶うはずがなかった。
託実は有名人。
ただのファンでしかない私が
立ち入ることなんて許されない存在……。
そのまま献花列に並ぶことも出来ず、
私は促されるままに、車を運転しながら会場を後にした。
その後も、何度も何度も唯香の電話を呼び続けるも、
唯香が電話に出る形跡はない。
家まで行ってみるものの、
帰ってる形跡すら存在しなかった。
そのまま新年を迎え、
私は益々、家の中に閉じこもった。
お祖父ちゃんの画廊も、
これ以上迷惑かけるのが嫌で退職。
ただマンションに帰宅して、
この家へと持ち帰ってきた、描きかけのキャンパスを
じっと見つめながら、筆を取り続ける。
自分の夢と思いを塗りこんで
託し続けている絵のはずなのに、
自分自身がこの絵を見ても何も揺れない。
届かない。
ときめかない。
ただキャンパスに
描かれた星空。
その星空に
伸ばし続ける手。
だけど……その絵はそこにあるだけで、
希望も光も存在しない。
ただその絵が伝えるものは
「苦しみ」のみ。