星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
光ではなく……闇。
そんな絵が
描きたいわけじゃない。
描きかけのキャンパスに
カッタ-ナイフで傷つけて
そのまま、キャンパスを倒すと
真っ黒な絵の具をその上から零した。
『誰もお前を受け入れてはくれないよ』
そんな囁きだけがもがき続ける私に
降り注いでくるみたいで。
このまま私は此処で。
ネガティブな感情だけが
私の中で大きくなっていく。
負の感情だけに支配されて
飲み込まれてしまいそうになる
そんな恐怖だけが何度も何度も自分を包み込む。
託実と出会ってそんな心の恐怖に
脅かされることなんてなくなってたのに。
そんな闇の時間を生息しながら、
時間だけが一月、また一月と過ぎていった。
三月に鳴りはじめる頃、
流石に今まで何も言わずに好きにさせてくれていた両親も
本格的に干渉を始め出す。
そんな干渉が凄く煩わしかった。
「百花、入るわよ」
閉ざした扉の向こう。
お母さんの声が広がる。
「百花、貴女……亀城くんと付き合っていたのね。
お母さん、お祖父ちゃんに話しを聞いて、
百花が塞いでた理由がわかったわ。
百花、今も託実さんが好きなんでしょ?
理佳と同じ人を愛してもいいじゃない?
生きているのは百花、貴女なのよ。
お祖父ちゃんが連絡くれたわ。
今日も託実さん、画廊に顔を出したって。
時間を見つけて、何度も何度も貴女に会いたくて
足を運んでくださってるみたいよ」
お母さんの声が聴覚を素通りしていく。
託実が私に逢いに来てくれてる。