星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】


「託実、少し休まないとね。
 何時まで、そうしてるつもりなのかな?」



優しい声色が心に突き刺さっていく。


全てを見透かした柔らかな言葉が
もう……何処にも逃げ道がなくなったことを
感じさせる。


「裕真兄さん、百花は?」



何とか絞りだした声。



「精神的に限界みたいだね。

 彼女をここまで追い詰めたのは
 いったい、誰なのかな?

 今は安定剤を点滴に入れて休ませてる。

 ここ暫く、彼女も大変だったんだろうね。
 まともに食事も取れてなさそうだったから。

 似たもの同士だね。

 唯香ちゃんも、百花ちゃんも。
 お前も、雪貴もね」



ため息を一緒に吐き出すように
ゆっくりと紡いでいく言葉。


「雪貴は裕兄さんが見てくれてるんだろう?
 唯ちゃんと二人」

「そうだね。
 二人のことは、兄さんに任せておけばいいよ。

 だから託実は安心していいよ。
 今は自分のことだけ考えておいて」


その言葉を受けて
俺は最後の覚悟を決めた。


「わかった。
 ケジメつけるよ」

「百花ちゃんを一人には出来ないだろう。
 
 託実が留守にする間、
 凛華に傍に居て貰うことにするよ」

「凛華って兄さんの?」

「そうだね。
 いずれは、一族にもお披露目する時が来るだろうね」


そんな風に言いきれる、裕真兄さんが少し羨ましかった。



今の俺は、
百花をそんな風に幸せに出来るだろうか?


今は一緒に居ることに必死になりすぎてる。



 
ふいに裕真兄さんの携帯が着信を告げて、
兄さんは電話に出る。



「今到着したらしい。
 下まで迎えに行ってくる。

 託実も出掛ける準備しておくんだよ」



そう言うと、兄さんは俺の部屋を出ていった。




暫くして、兄さんが連れて戻ってきた女性は、
俺よりも幼さを感じる。



それに彼女……何処かで見た事ある……。




「凛華、彼が俺の従兄弟の託実。
 Ansyalのベーシストをしてる」


兄さんがそうやって彼女に俺を紹介する。
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