星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
放って欲しかったと思う私も、
託実と逢えて嬉しかったと思う私も、
どちらも本当の私で、相容れない私の心はグルグルするばかりで。
その後、ベッドにもう一度潜り込んだけど
私は眠れるはずもなく、朝を迎えた。
少しでも物音をさせると、Rikkaが気が付いて声をかけてしまうから
私が寝ているのを装いながら、息を潜める。
「ねぇ、もうすぐ8時になるんだけどまだ寝てる?
そろそろ起きてるかな?
アタシ、今日11時から仕事が入ってて出掛けなきゃなんだ。
本当は一緒に居たいんだけど、ホント、ごめん。
でもこの部屋で待ってたら、託実さん帰ってくると思うから。
此処来る時に、近くにスーパー見つけたから
ちょっと食べ物買ってくるよ。
何か欲しいものある?
アタシはとりあえず、ヨーグルトが必須なんだけどね」
Rikkaの声が聞こえるけど、
私は眠ってるふりをして、返事をせずに黙ってると
Rikkaの足跡が部屋の前から遠ざかって、
暫くすると玄関のドアが閉まる音がした。
カチャリ。
閉ざされたドア。
この託実のマンションにいるのは私だけ。
誰も居なくなった家の中、
私はベッドから這い出してリビングへと歩いた。
改めて、じっくりと見渡す託実の部屋。
何インチなんだろう。
壁にかかった大きなTV。
後ろに視線を向ければ、
映写機みたいな機械も設置されてて
部屋の四方には、天井から吊るされたスピーカー。
家具とかが、ごちゃごちゃ出てるわけでなくて
少し寂しいくらいの殺風景な空間。
そのままリビングから、続く他の部屋に向かうものの
台所らしきスペースが見つからない。
託実の部屋を探検してみたい好奇心がかって、
少しずつ冒険を始める。
生活感を感じるものは、流し台も含めて
作り付けの扉の奥に、片付けられていた。
秋頃から何度も託実との時間は過ごしてきたけど、
託実の部屋に来たのは今回が初めてで、
状況が状況だから、心の中はぐちゃぐちゃだけど
それでも……散策したい心境は、私を行動的にさせる。
次から次へと、ドアや引き戸とかを開けて
託実の生活部分を感じる。