星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
23.深き海に抱かれて -百花-
沈んでいく……。
私の意識が深く、海の底に落ちていく。
その海は冷たいわけじゃない。
息苦しいわけじゃない。
ただ私の意識を沈ませていく
そんな海。
全てから解放させるかのように、
光一つ射さない、
真っ暗に深い場所へとドンドン意識が落ちていく。
何処まで落ちるのか、
わからないほど深く……深く……。
沈めば沈むほど、
一つ、また一つと私の心の欠片が剥がれ落ちていく。
……怖い……。
ふと恐怖が芽生えるものの、
私の抵抗は、この深海の中では意味なんてなさない。
ただ流れるままに、
委ね続ける時間。
ふと我に返って、自分を見つめようと
意識を凝らしても、
少し前の時間のことすら、
何も思い出せない。
あれっ?
私、さっきまで何してたの?
何してた?
この場所に来るまでの間の記憶すら、
今の私にはわからない。
失くした物?
最初からなかったもの……?
走馬灯が流れるように思い浮かんでは
スーっと遠ざかっていく何か……。
そんな何かを見送りながら、
ただただ涙を流すことが精一杯の私の抵抗。
『モモ、怖がらないで。
モモ、お姉ちゃんが傍に居るから。
泣かなくていいから』
真っ暗な世界に、一筋差し込んだ光。