星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
「託実さん。
この曲……昔、理佳さんに送ったって言う
(星空と君の手)ですよね」
雪貴の言葉に静かに頷く。
「雪貴、今は活動休止中のAnsyalだけど
俺は、解散させる積もりはないよ。
Ansyalは、雪貴の卒業を待って
活動をアクティブに開始。
そのつもりで、居てくれ。
隆雪の想いが詰まったAnsyalを、
このまま終わらせるなんて出来ない。
他のメンバーにも事務所にも、そのつもりで話を通す。
だから……俺もその日に俺の全ての想いを詰めた
一曲を編成したい。
俺の過去から現在、未来に繋がる一曲。
Ansyalの【星空の祈り】を受けて
更に広がっていくAnsyal版【星空と君の手】 」
もう離すことのない君に誓って。
「託実さん。
だったら託実さんのフレーズを前面尊重しますよ。
その上で……俺も協力します。
俺もAnsyalのメンバーですから」
特別室のベッドの上、
天井の硝子窓から星空が降り注ぐ。
眠り姫の目覚めを待ちながら
目覚めのプレゼントを生み出していく。
「百花。
早く、目覚めなって。
ほらっ、アンタこんなにも託実さんに
愛されてんじゃない。
何時までも……寝ぼすけしてんじゃないよ。
流石の私も……これ以上は
待てないんだからね」
百花の眠り続けるベッドに歩み寄って
今も眠り続ける百花に思いを吐露する唯ちゃん。
そんな唯ちゃんを雪貴がすぐに
優しく支えに行く。
*
百花……早く起きろよ。
*
心の中、呟きながら静かに愛器を爪弾く。
そのフレーズに即興アレンジで
雪貴がギターを重ねていく。
時に……、雪貴自身のフレーズで。
時に……隆雪の懐かしい癖のあるフレーズで。
懐かしいのに……ブレも戸惑いも
迷いもない……澄み切った音色でストレートに
刻み込んでくる雪貴の生まれ変わったギターの音色。
そんな時間を送りながら、
百花の目覚めを待ち続ける。
一日、一日が、
とても長い待つだけの時間。
*
……百花……。
その唇に目覚めのキスを
降らせるるまで君は
起きないつもりなの?
*
眠り続ける百花の傍に腰をおろして、
その淡い薄桃色の唇に、静かに唇を重ね合わせる。
命を注ぎ込むように……
語りかけるように。