星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
25.星空と君の手 -百花-
『モモ、何時まで眠ってるの。
大切な人を何時までも悲しませないで……』
何処からともなく聞こえた
お姉ちゃんの声。
ゆっくりと耳を澄ますと、
優しい、心地よい音色が私の中に広がった。
……託実の音色……。
託実が奏でるベース、
ギブソンサンダーバードの音色。
力強い鼓動が私の背中を強く押してくれる。
一定のリズムで奏でられるベースに重なっていくのは、
そう……Takaのギターの音色。
そんな音色に引き寄せられるように、
ゆっくりと浮上していく私の意識。
*
『百花。
早く、目覚めなって。
ほらっ、アンタこんなにも託実さんに
愛されてんじゃない。
何時までも……寝ぼすけしてんじゃないよ。
流石の私も……これ以上は
待てないんだからね』
*
唯香……、
親友の叫びにも似た優しさ。
ったく……もう唯香は無茶苦茶なんだから。
体を起こして手を伸ばそうとするのに、
どんなら力を入れようとしても、
体は言うことを聞いてくれなくて、
私は何も出来ないまま、ただ親友の声を受け止める。
……唯香、心配かけてごめん……。
『唯ちゃん。
ほらっ、百花さんに悲しい顔見せるなって
言ったよな。
俺は兄貴にそんな顔しか見せられなかったから』
そうやって唯香に声をかけるのは、
唯香の教え子、宮向井君。
懐かしい声が次々と聴覚を刺激していく。
その後、ふんわりと柔らかい感触が
唇に降り注いだ。
啄むように、パワーを注ぎ込んでくれるように
優しく降り注いだくちづけ。