星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】



「おじさんはね、託実の父の亀城宗成です。
 理佳ちゃんの主治医をしていたこともあるんだよ。

 おじさんの力が及ばず、理佳ちゃんの時は悪かったね。

 向こうに居るのは私の家内、亀城薫子」



宗成先生がそう言うと、今度は託実のお母さんが
ゆっくりと私に微笑みかけた。



「最後は私かな。
 
 百花ちゃんを担当する、
 託実の従兄弟の伊舎堂裕真です。
 
 唯香ちゃんや雪貴君の主治医をしてるのは私の兄」


「名前はずっと前から知ってます。

 伊舎堂裕さんも、伊舎堂裕真さんも。
 昂燿校と、悧羅校の生徒総会をされてた方たちだから。

 私も海神校の卒業生だから。

 でもおかしいですよね……その頃から、ずっと託実のこと……
 託実さんのこと気になってたのに、陸上部のエースの託実先輩が
 Ansyalのベーシストの託実さんだなんて、思ってもなかったから」


そうやって答えた私に託実のお父さんとお母さんは、
嬉しそうに『ありがとう』と言葉をかけてくれた。



「親父、兄さん、まだ?
 診察終わった?」


ふいに聴こえてくる声は、
痺れを切らしたらしい、託実の声。


そんな声を聴いて、三人はクスクスと笑い出した。



「百花さん、大変な子だけど
 託実を宜しくね」



そう言って託実のお母さんは笑った。





「託実、入っていいよ」




裕真さんがそう言いながら、カーテンを開けると
私のベッドの周囲は、まだ賑やかになる。




皆と沢山、話してみたいけど
まだ私の体力は落ちたままみたいで、
暫くすると、瞼が重たくなって閉じていく。




「あらあら、百花も疲れたみたいね。

 後は託実さんに任せて、
 お母さんもお父さんもお祖父ちゃんと一緒に帰るわね。

 またお見舞いに来るわ」


「じゃ、私も帰る。
 雪貴、行こうか」





お母さんと唯香の声が聞こえて、
足音が遠ざかっていく。




静かになった病室。





「百花、もう少し休むといいよ。
 俺も隣のソファーで仮眠してるから」




託実はそう言うと、
掛布団を掛けなおしてくれて唇を重ねた。



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