星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】




フレームに入った時の止まった理佳の写真を見つめながら
俺は茶封筒へと楽譜を戻した。



それを鞄に詰め込んでCDを再生できるように、
ミニプレーヤーを持ってマンションを後にする。 




今度こそ、百花の待つ病室へ。



神前悧羅大学附属病院。


いつもの様に関係者入口から、
警備員に声をかけて、記帳して役員棟へと向かう。


IDカードを翳して、
専用のエレベーターで向かう最上階。




「百花」


ノックと同時に声をかけると、
なかからはすでにお見舞いに来てた、唯香ちゃんと雪貴が姿を見せる。



「託実さん、お疲れ様」
「お疲れ様です。託実さん」



唯香ちゃんと雪貴の声に招かれて入室した病室。


特別室のガラステーブルには、
雪貴の教科書らしきものが開かれてた。



「勉強してたのか?雪貴」

「三ヶ月休学してたから。
 感覚取り戻さないとね。

 唯ちゃんに聞いても、理数系は苦手みたいで殆ど教えて貰えず
 此処に来たら、裕先生か裕真先生とか捕まえられるかなって。

 後は託実さん」

「後はって、雪貴。
 俺はおまけかよ」


そう言ってぼやいた俺の様子を見ながら、
キャンバスに向かっていた百花が視線を移して微笑む。



「お帰りなさい、託実。
 30分くらい前に、唯香と雪貴君来てくれたんだよ。

 今日は朝から、いつものリハビリ。
 固まりすぎてた筋肉も、少しずつ柔らかくはなってきてるのかな。

 ちょっとだけ、可動域が広くなったの」



目覚めた後、裕真兄さんの治療計画に基づいて
リハビリをプログラムされた百花。


中三の時に俺も膝を怪我して、
リハビリの過酷さは理解してるつもり。



ただ……その時はしんどくても百花のリハビリには、
あの時俺がお世話になった人が手伝ってくれてるのは知ってる。 



「焦らずにゆっくりでいいよ。
 退院が決まったら、一緒に暮らそう」



そう言って百花に告げると、
百花は嬉しそうに顔を赤らめる。

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