星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】


こういうのって選ぶの、案外難しいな。
百花に似合う奴……。

百花の笑顔を想像しながらショ-ケースから出して貰って指輪を眺める。


目移りする中、一つだけスーッと手を伸ばした指輪。


宝石はダイヤとペリドット。
花のデザインは、カッティングされた薔薇。


安易かも知れないけど、LIVEの度に、百花自身が自分で作って来てた髪飾りの薔薇と繋がった。


「これをお願いします」

「まぁ、素敵なデザインね。
 託実、指輪のサイズは?」


宝珠姉さんに言われて絶句。
指輪のサイズ測ってない。

何やってんだよ、俺。
百花の薬指……思い出せ。


「宝珠さま、託実さま、それには及びませんわ。
 指輪のサイズは、託実さまがお困りになられるのを見越して
 先に裕真さまより、早谷に連絡がありました」


櫻吏さんが告げた早谷【はやせ】が、フィアンセの早谷由毅【はやせなおき】さんだと
理解できる。

裕真兄さんも裕兄さんも一綺兄さんも、
生徒総会メンバーとして交流が深い存在。

抜かりなしかよって言う気持ちと、助かったーっと言う気持ちが交錯しながら
俺は予定通り、買い物を終えて実家へと向かった。


久しぶりの実家。
亀城の屋敷に戻った俺は、亡き祖父母の仏壇に手を合わせて
そのままリビングへと向かう。

すでに両親とも帰宅して、リラックスしている中
リビングに入って、TVのボリュームを下げた。


「親父、母さん」

「なんだ託実。おもむろに」

「そうよ、託実。
 どうしたの?そんなに思いつめて」
 

そんな両親の言葉を受けて深呼吸。
何度か空気を取り入れた後、一気に吐き出すように告げる。


「今から百花にプロポーズする。
 指輪も買ってきた。

 いい返事貰えたら認めて欲しい。

 新居も、さっき裕真兄さんに相談してきた」



そこまで告げると、ふぅーっと最後まで息を吐き出す。


親父とおふくろは互いの顔を見合わせながら、
優しく視線を向けた。


「お父さんも、お母さんも反対しないわ。 
 理佳ちゃんの妹が、私たちの娘になってくれるなんて夢のようね」

「理佳の妹だからじゃないんだけど」

「そのくらいお父さんも、お母さんも知ってるわよ。

 託実が選んだ方が百花ちゃんで良かったと思うし、
 百花ちゃんが理佳ちゃんの妹って言うことが、もっと嬉しかったのよ。

 ビシっと決めてきなさい。

 また託実の独りよがりなんでしょ?
 貴方は、昔からここぞって時に臆病なんだから。

 吉報を待ってるわ。
 政成義兄さんと恋華義姉さんにも話しをふっておかないと。

 ねぇ貴方、喜多川家と満永家へのご挨拶の準備も進めないと」


おいおいっ。

さっきは俺に、独りよがりとか言いながら
親父やおふくろの方が、十分暴走してんだろうが。


そんな両親をリビングに残して、
実家から歩いて10分ほどの場所にある病院へと向かう。
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