星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
会食の途中も、何度も何度も私のことを託実の親族は気にかけてくれる。
退院直後で心配していた体力でも何とか、一連の儀式を終えて
私はホテルの前で家族と離れて、託実の運転する車で今日から暮らすマンションへと向かった。
交通事故に会う前、一度だけ訪れたことのある同じマンション。
地下駐車場に車を止めると、託実は私の手を取ってエスコートするようにエレベーターへと乗り込む。
最上階の一つ下のボタンを押して、エレベーター特有の浮遊感が包み込む。
ゆっくりと開いた先には亀城の表札。
「今日からの新居だよ。
学校が終わり次第、雪貴と唯ちゃんが顔を出す予定になってる。
少し疲れただろ。
二人が来るまで休めばいいよ」
そう言いながら端末を翳してドアを開けると、
私に一枚のカードを手渡す。
「後で、携帯を登録しておく。
こっちのカードは、携帯が充電切れた時の予備かな。
非常時は、こっちの鍵でも開けられるようになってる」
そう言って託実はカードと、鍵を私の手の中に落とした。
「百花の部屋は、この場所。
こっちが俺の部屋で、向こうが子供が出来た時には子供部屋になる予定。
キッチンは対面にした」
前に訪れた託実のマンションとは違って、
少し明るいトーンで優しく包み込まれた新居。
「後はこの奥が寝室」
寝室って言う言葉に、胸がときめく。
慌てて妄想をふるい落すように、首を振ってると
託実がくすくすと笑いだす。
「百花……」
引き寄せられるように託実の元へと近づくとこ、
抱きしめられた私は、そのままベッドへと倒れ込んで、
託実の優しい口づけが落とされた。
「続きは……また今度……。
今は少し休みな。
雪貴たちが来るまでな。
俺も少し休むよ。
緊張しっぱなしで、睡眠不足。
昨日は結納の中に入れる、家族書と親族書を筆で書かされてたんだ。
いまどき、PCとかじゃなくて筆だぞ。
筆なんて何年ぶりだよ、持ったの」
そんな話をしながら、二人で寝転んでも十分なキングサイズのベッド。
ゴロリと寝転んで一時間ほど仮眠した。
夕方、スーパーの袋を持ち込んた唯香と雪貴くんが姿を見せて
部屋が一気に賑やかになる。
唯香の手料理を久しぶりに食べて、
その夜は、久しぶりに隣のマンションの地下にあるスタジオへ。
そこには、託実の頼もしい仲間である
Ansyalのメンバーが揃って、練習を始めていた。