星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】


そう一年なんて長くない。

その間、俺たちもまた雪貴に負けないように進化していく。

隆雪の影武者としての雪貴じゃなくて、
ありのままの雪貴をTakaとして迎え入れてやれるように。

あの頃、求めることのなかった新ジャンルの音楽にも
視野を広げて活動できたらと思ってる。


前の方が良かったっとファンに思わせるのでなくて、
どちらも受け入れて貰えるように、最善の形で前進させたい。


「雪貴。
 それに……アイツも隆雪も喜ぶと思うぞ。
 逆にお前がそれを諦めようものなら、隆雪は怒る気がするけどな。
 せっかくのチャンスと向き合えない弱虫は必要ないってさ」

「託実さん……」

「雪貴、後悔しないようにチャンスを掴んで来い。

 俺たち五人は、お前が成長して帰ってくるのを
 Ansyalのファンたちと待っててやるから」


電話の向こうの雪貴は、沈黙を続ける。
雪貴の悩みは一つしかない。


「雪貴、唯ちゃんのことで悩んでる?

 心配しなくても大丈夫だ。
 唯ちゃんの傍には、お前の代わりに俺や十夜が居る」


雪貴、お前は一人じゃないんだから。

唯香ちゃんの為なら、
百花だって力を尽くしてくれる。



だから一年なんてあっと言う間だよ。
ある意味、俺自身に言い聞かせるように心の中で呟いた。




雪貴との電話は、唯香ちゃんの帰宅と同時に終わり、
俺はそのまま、百花の元へと連絡を入れた。


唯香ちゃんが相談するとしたら、
百花以外はあり得ないかもしれない。


百花には雪貴の兄貴分として、
俺は雪貴に留学を進めたことを伝えた。


電話の向こう、百花は笑う。


「大丈夫、託実から電話貰う前に唯香が訪ねてきたもん。
 唯香は、弱虫じゃないから。

 大丈夫、私も託実と一緒だよ。
 それに唯香だって。

 だから雪貴くんが不在の一年、私がしっかりと唯香を支えるって
 決めたから。託実も協力してね」


雪貴が決めた留学の決断。

雪貴不在一年の間に、もう一波乱アイツらの身に降りかかるなんて
その時の俺は知る由もなかった。

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