星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
ふいに自宅マンションで、ウェディングドレスのデザインを考えている時、
携帯が着信を告げた。
着信音から、唯香からの電話だとわかる。
「もしもし、唯香どうかした?
まだ学校じゃないの?」
「うん。
今は学校なんだけど、この後授業ないから」
そう言った電話の向こうの唯香の声は、
何処となく沈んでる。
「わかった。じゃ、今から私も気分転換したいから、学校まで迎えに行く。
一時間くらいだったら、会える時間都合できる?」
「都合する」
「了解」
そのまま電話を切って、地下駐車場にある愛車に乗って
唯香の勤務先である、懐かしい悧羅校舎へと向かう。
海神の生徒の私には、このキャンパスに通学したのは大学時代だけだったけど
それでも神前悧羅の卒業生には違いない。
通行許可証となる、悧羅の卒業証代わりになるバッチを受付の警備員に見せると
バッチの中の組み込まれた卒業情報が読み取られて、門が厳かに開く。
受付を済ませて、学院の駐車場へと車を止めると
唯香と合流する約束になってる、カフェテラスへと向かった。
久しぶりに学院の中へと足を踏み入れる。
スムージーを注文して、椅子に腰掛けると
唯香が暫くして姿を見せた。
「百花、ゴメン。
後で百花のマンションに行こうと思ってたんだけど、
そこまで持ちそうになくて。
心は決まってるの。
心は決まってるんだけど、その決断に心がついていかない時って
どうしたらいいの?」
って、唯香。
言ってることめちゃくちゃ。
「唯香ストップ。
順番に説明してくれなきゃ、わかんないって」
テーブルに運び込まれてきたスムージーを少し飲んで、
もう一度唯香を見つめる。
「さっき、理事長室に呼び出されたの。
雪貴、1年間の留学の話が出て……
ちゃんと行かせてあげたいって心は決まってるの。
雪貴の人生、邪魔したくないし私、雪貴の荷物にはなりたくない。
だって、私の方が年上なんだよ」
年上とか年下とか、この際関係ないと思うんだけど
唯香の思考がパニックになってる原因が、
雪貴君の留学にあることは充分にわかった。