星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
それを受けて、憲のドラムスティックが打ち鳴らされる。
祈と雪貴のツインギターが絡み合う。
その中、俺のサンダーバードの分厚い音が、
地を這う様に憲のドラムを支えていく。
ステージに居ても、俺が追いかける視線は百花。
百花は、お腹にそっと手を当てながら泣いているようだった。
「百花……」
十夜がMCをしようとしていたタイミング、
そのマイクを奪って、俺は名前を紡ぐ。
そのままマイクを十夜へと戻して、
ステージから、百花の居るその場所へと降りていく。
静かに涙を流す百花をお姫様抱っこで抱きかかえると、
再び、ゆっくりとメンバーの元へと向かう。
なぁ、お前ら。
何の曲演奏しようとしてたかなんて、
知らされてない俺にはわかんないけど、
お前らだとやってくれるよな。
俺も振り回していいだろ。
「俺から……そしてAnsyalから
まだ未発表の一曲。
- 星空と君の手 -贈ります……」
気が付いたら、会場に集まった人たちに向けて
俺はそう呟いていた。
メンバーたちに視線を向けると、
『そう言うと思ったよ』っとでも言いたそうな視線を投げかけてくる。
ステージに準備された椅子に、百花を座らせて
俺は再び、サンダーバードを構えた。
十夜のソロ。
雪貴のピアノの音色。
そのピアノに寄り添う様に、
祈のギターが交わり、憲のドラムが重なって行く。
俺が奏でるベースの音色を支えるように、
美しく交わり続けるサウンド。
その中に、
Ansyalの未来を感じられた気がした。
突然のサプライズ。
百花は喜んでくれてるだろうけど、
理佳、お前もきっとそこで笑ってるだろう。
理佳から百花へと受け継がれていく
俺にとっての大切な曲。
それはやがて……俺たちの子供へと
受け継がれていってほしい。
そんな僅かな想いを込めながら。