星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
理佳の想いを受け止めて、
俺が百花へと繋げていく。
そしてそれが更に俺たちの子供へと繋げつづけていくことが出来たら
どんなに未来が広がっていくだろう。
理佳を知らない存在でも、理佳を少しでも感じてくれるかもしれない。
アイツに託された想いを俺が誰かに伝えることで、
アイツは今も、その人たちの心の中に強く生き続けることが出来るような気がした。
それは理佳だけじゃない。
もうすぐ命日が近づいてくる、隆雪にしても同じだ。
「ねぇ、託実。
お姉ちゃんの作った曲につける歌詞、
私が頑張ってみてもいい?
お姉ちゃんのメロディーに私が歌詞を書いて、
それをイメージした天使の絵を、私が絶対に書き上げる。
そしたら……私もお姉ちゃんをもっと感じられる。
託実の傍で、大切なお姉ちゃんを感じながら
今を生きて……お姉ちゃんから続いていく想いを、
お腹の中のこの子にも伝えるの」
百花にとっては、妊娠した瞬間から
お腹の中にいる赤ちゃんは、絶対に女の子で
理佳の生まれ変わりなのだと言い続ける。
それが本当かどうかなんて、
誰にも知る由もないけど……そう思い続ける百花の想像に
乗っかるのもいいかななんて、最近は思ってる。
*
いつか貴方の傍に行くから……。
君に奏でる夜想曲を抱きしめて
*
アイツが天国に還るその時、
楽譜を握りしめて、空を見上げたその時
俺の聴覚に、そんなアイツの声が届いてた。
誰にも言うことは出来なかった、
俺だけが聴こえたはずの理佳からの本当意味での
ラストメッセージ。
そしてそれと同じような意味合いの言葉を、
事故の後、生死を彷徨い続ける百花に告げた理佳。
だから……俺たちの元に帰ってくる
アイツの為に、今俺たちが出来ることは
アイツを力一杯守れるように、未来を切り開いていくこと。
封印を解いたその日、
俺たちの心はとても穏やかだった。