星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

14.お姉ちゃんの曲 ~虹の希望~ -百花-



託実によって、ずっと託実が大切に持ち続けていた
お姉ちゃんの宝物の封印が解かれた夜。


私は紙袋の中に入っていた1枚のCDを手にした。



CDケースの中に入って、
夜想曲と言うタイトルがつけられたアルバム。



夜想曲って言うのは、
多分……お姉ちゃんから託実にあてられた
封筒の中のラストレターと同じタイトル。



【ラクリモーサ~失った日々】
【煌めく季節】
【希望の翼】
【未来の祈り】
【夢の果てに】



CDケースとの裏には、
タイトルだけが綴られてた。


そんな曲たちを流しながら、
私はキャンパスに向き合い続ける。




出来た……。

最後のひと塗りを終えると、
そのまま筆をおいて、ゆっくりと描かれた物語を見つめる。




そのまま、お祖父ちゃんの元へと携帯を握りしめて
一本連絡を入れた。


すぐにお祖父ちゃんがマンションへと駆けつけてきて、
その絵を見つめる。




「百花、よくやったな」




目を細めながら、そう言ったお祖父ちゃんは
完成したばかりの絵を、
ゆっくりと部屋からスタッフの手によって運び出していく。



来月の展覧会もこれで間に合う。



櫻柳会長にも面目がたつし……
何よりも、託実やお姉ちゃんへと想いを沢山閉じ込めた
絵が……お姉ちゃんの完成させてきた曲や、託実たちが発信し続けるサウンドの様に
誰かの心に届いてくれたいいなーなんて、心から思えた。


アーティストへの一歩。


自己満足でただ想い出にすがるだけの絵から、
大切な何かを発進したいと思わせてくれた、気付かせてくれた大きな一歩。



そんな一歩を切り開いた絵が、
『星空と君の手』。

Ansyalの新曲のジャケットになることがすでに決まってる。
それだけで凄く心が晴れ晴れとしていた。




ソファーにもう一度戻って、ゴロリと横になって伸びをすると
インターホンがなって、託実と唯香が姿を見せる。



「ただいま、百花」

「おじゃまします、百花」



二人揃って帰ってくるなん珍しいなって思ってると、
唯香が先に言葉を発する。


「少し前に託実さんから電話貰ってさ。

 なんか、聴かせたいものがあるらしいんだけど
 託実さんには無理とかでさ。

 まっ、私こう見えても、ピアノは得意だから」


そう言って、唯香は鍵盤を演奏するように空中で指を動かす。


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