星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】



お姉ちゃんが私の為に作ってくれていたという、
その曲は何処までも優しい音色だった。




託実が譜面台から、
その楽譜を手にして私の傍へと近づいてくる。
 


「百花、見てみるといいよ」



手を出されたお姉ちゃんの手書きの譜面。

その隅っこには、小さな字で




Dear:百花

Sincerely





ただそれだけ、綴られていた。






嬉しくて涙が溢れだしたその時、
ピアノの音色に、いつの間にかヴァイオリンの音色が重なって行く。




「裕兄さん、帰ってきたんだ」


託実が呟いた先、唯香のピアノにあわせるように演奏しているのは、
裕先生。



「理佳の時もやってたらしいよ。
 一緒に演奏するの」


そう言いながら、託実は私を支えるように
後ろ手をまわして、じっと演奏風景を見つめ続けていた。





お姉ちゃん、私……
今ようやく、お姉ちゃんの本当のメッセージ受け取ったよ。


託実や……皆がいなければ、
きっと手にすることが出来ないまま終わってた
お姉ちゃんとの時間。





お姉ちゃん、沢山の宝物を有難う。
ちゃんと受け取ったよ。




心の中、唯香と裕先生の演奏に身を委ねながら
私は対話を続けていた。




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