星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
お姉ちゃんが私の為に作ってくれていたという、
その曲は何処までも優しい音色だった。
託実が譜面台から、
その楽譜を手にして私の傍へと近づいてくる。
「百花、見てみるといいよ」
手を出されたお姉ちゃんの手書きの譜面。
その隅っこには、小さな字で
*
Dear:百花
Sincerely
*
ただそれだけ、綴られていた。
嬉しくて涙が溢れだしたその時、
ピアノの音色に、いつの間にかヴァイオリンの音色が重なって行く。
「裕兄さん、帰ってきたんだ」
託実が呟いた先、唯香のピアノにあわせるように演奏しているのは、
裕先生。
「理佳の時もやってたらしいよ。
一緒に演奏するの」
そう言いながら、託実は私を支えるように
後ろ手をまわして、じっと演奏風景を見つめ続けていた。
お姉ちゃん、私……
今ようやく、お姉ちゃんの本当のメッセージ受け取ったよ。
託実や……皆がいなければ、
きっと手にすることが出来ないまま終わってた
お姉ちゃんとの時間。
お姉ちゃん、沢山の宝物を有難う。
ちゃんと受け取ったよ。
心の中、唯香と裕先生の演奏に身を委ねながら
私は対話を続けていた。