星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

16.満月 -百花-



一月に展覧会が終わり、
私はお腹の中の赤ちゃんの成長を守りながら
臨月の六月を迎えようとしていた。

託実は、時間を見つけては私を気遣ってくれる。

そんな生活は変わらないけど、
そんな託実の優しさだけには甘えていたくない。


ちゃんと強くなりたいと思うし、
託実にも、プロデューサーとしてAnsyalのメンバーとして
無理なく責任ある行動をしてほしい。


その為には……ちゃんと私が、家庭を守れる存在になりたい。
そんな風に、日に日に強く思う様になってた。



その日、託実は前日からのプロデュース作業が終わらなくて
帰宅できず。

私もそれでいいと思ってた。



だけど……明け方近くに、陣痛と思われる痛みが襲い始めた。


何時でも出掛けられるように、お泊りセットだけは先に作っていたので
それを玄関前に置きながら、暫く様子をみる。


家族が起きそうな時間まで様子を見た後、
誰かに連絡しようと携帯電話を握る。

その瞬間、ベストタイミングで液晶には託実の名が表示される。



「おはよう。
 百花、今から帰るから。

 朝ご飯、頼んでもいいかな?」


そう言って話を切りだす託実。



「ごめん……託実。
 今から、お母さんか唯香か捕まえて病院に行くね」

「病院?」

「少し前から……陣痛かなって言う痛みが来てるから」

「少し前って百花。
 もう少し俺を頼れよ。
 仕事中でもいいから」



電話の向こう、託実は少し怒ったように声を荒げた。



「ごめん……。
 でも、託実の仕事を邪魔したくないの。

 託実の荷物にはなりたくないから」


それは私の本音。


託実にとってのプラス効果にはなりたいけど、
託実にとってのマイナスの女にはなりたくない。

荷物には絶対になりたくない。
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