星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
幼等部から神前悧羅学院の海神【わたつみ】校に通い続けてた私は、
大学になって、初めて学校側の理由で、悧羅【りら】校舎へと移動した。
その移動した通学路で偶然見つけたチラシ。
それが私がAnsyalを最初に見つけた瞬間だった。
チラシを受け取って、吸い寄せられるように地下に続く階段を降りると
そこは私が知らない未知の世界。
チラシを受付で見せて、4000円を支払って中に入ると
その世界は私には凄く輝いた眩しい世界だった。
その場所で私が目をとめた存在が、ベースの託実。
その日から私の心の中は、託実さまで溢れだした。
翌日、CDショップに出掛けて販売している全ての音源を購入して
毎日の通学で聴くようになった。
そんな私に、ツアーグッズを鞄にぶら下げてたのがきっかけで
Ansyal仲間が出来た。
その子が、当時悧羅校の音楽部を専攻していた緋崎唯香【ひざき ゆいか】。
唯香との出逢いが、私をAnsyalの中へとより深く踏み入れさせた。
唯香は、ギターのTAKA命。
私はベースの託実さま。
大学生の貴重な時間を、学校とAnsyalに捧げ続けて
この4月、私も唯香もそれぞれに就職した。
私は祖父の画廊。
そして唯香は、母校・神前悧羅学院悧羅校の音楽教師。
社会人になってからも、Ansyalへの想いは消えることなんてなくて、
自由に遠慮なく使える軍資金に、これからの夢も膨らんでいく。
そんな聴いているだけでも幸せにしてくれる、
Ansyalのサウンドに背中を押されながら、
託実さまを妄想しつつ、ガラステーブルに紙を置いてデッサンを始めていく。
そんな集中力に水をさすように、
携帯電話が着信を告げる。
液晶に表示されるのは、
『お祖父ちゃん』の文字。
「もしもし、おはよう。
お祖父ちゃん?」
「おはよう、百花。
起きていたか?」
「うん。
夜頑張ろうと思ってたんだけど、ウトウトしちやって
今、また必死に絵を描いてた。
今回のイメージが固まらなくて」
「そうか、朝早くにすまなかった。
だが百花に少しでも早く知らせたくて、お祖父ちゃんは電話してしまったよ」
「そんなにお祖父ちゃんの気持ちを逸らせたのは何?」
「昨日の夜の食事会でな、次の展覧会、
百花の絵も出展することが決まったよ」