星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
雪貴が、その子に話かけてその子が……泣いて、
雪貴が……キスして……。
おいおいっ。
雪貴、遅れた理由がそれかよ。
突然の情報に正直驚いてる俺と、
今後のAnsyalの行く末を案じている俺自身。
そして俺自身も百花ちゃんを探し続ける。
見つけた……。
壁の向こう。
雪貴とその子を
見つめながら
仁王立ちしてる彼女。
その子が、彼女の方に走っていくと、
視界から姿が消えたのを確認して
雪貴はゆっくりと関係者入口の方に近づいてくる。
「おはようございます。
託実さん」
雪貴が俺に気が付いて、
声をかける。
「あぁ、遅かったな」
「すいません。
兄貴のところ、
行ってて遅くなりました」
隆雪のところって言われてしまえば、
俺はそれ以上は何も言えなかった。
俺以上に、辛い思いをしているのは
他の誰でもない雪貴自身だと思うから。
「そっか、隆雪と話せたか?」
「兄貴に今日も頑張ってくるって伝えてきました。
この日を兄貴が大切にしてたのも知ってるから」
「そうか」
「奥ですぐに準備してきます」
そう言って、楽屋に走って行こうとする
雪貴の腕を反射的に無言で引っ張る。
「託実さん?」
「雪貴、話がある」
短くそう言い放つと、
雪貴は観念したように俺の後をついてきた。
壁際、雪貴を端に呼びこんだ俺は
先程の一件を突き止める。
「雪貴、どういう関係だ?
さっき、お前がキスした相手
いつもドセンにいるお前のファンだろ」
どう言う関係だ?
俺自身で紡ぎだした言葉が
そっくりそのまま、
俺自身にも突き刺さる。
「すいません。
託実さんが心配する関係じゃないですから。
アイツ、俺の担任なんですよ」