星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
力強いメンバーコールに
支えられて、眩しいその場所へと
一歩ずつ踏み入れる。
ステージの熱気が
ダイレクトに伝わってくる。
ステージから、
会場内をぐるりと見渡す。
知らず知らずのうちに
探し求めるのは百花ちゃん。
……見つけたっ……。
いつもの定位置。
真っ直ぐな眼差しで、
俺を凝視して捕える。
思わず、見惚れる俺は、
次に出てきたTakaに救われた。
Takaが俺の肩を軽く叩く。
現実を取り戻した俺の時間が動き出す。
もう一度、会場内を見渡して、
一礼すると、持ち場について愛器を持つ。
愛器・Gibson(ギブソン)サンダバード。
ふくよかで伸びのあるサスティーン。
ピック弾きの疾走感ある
ゴリゴリ・ブリブリした音圧。
中音域のパンチ感や低音域の音圧。
個性的なその音色に
一目惚れして、選んだ俺のパ-トナー。
弾きにくさはまぁ……慣れるまで時間がかかるんが、
それも踏まえてコイツしかいないと
思えた相棒。
相棒を肩からかけると
一気にスイッチが切り替わる。
十夜も出てきて、
まずは全員で祈りを捧げると、
20分間。
全力で走りきるステージ。
インディーズ時代からお世話になってきた
久しぶりのホームステージは、とても優しい。
そして今日のステージは
……特に……違ったものに見えてしまう。
どれだけ演奏に集中しながらでも、
どれだけパフォ-マンスしながらでも
無意識には視線は彼女を捕える。
彼女の表情の全てを
刻み込もうと……
俺の心は……必死らしく……。
制御出来ない感情。
渦が俺を飲み込もうと
待ち構えている。