星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
6.香港~FC旅行~ -託実-
急きょ、霞ヶ丘で行ったシークレットLIVE。
だけどそれ以降は、夏休みに入るまで
AnsyalとしてのLIVEなどは一切セッティングしなかった。
地下作業を続けながら七月の終わりにはアルバムが出せるように
準備を続けながら、メンバーそれぞれの時間を過ごしていた。
十夜や憲には、守らなければいけない会社もある。
雪貴は高校生。
祈は大学生。
無理ばかりはさせられないのが、
今のAnsyalの現状だった。
アイツらに時折連絡しながら、
俺が事務所と詰めてセッティングしたのは、
結成以来毎年、隆雪の一声で行ってるFC旅行。
その地にセッティングしたのは、
Ansyalが絆を固めた地・香港。
雪貴の揺れる心を感じる俺には、
この場所がAnsyalにとっても今一度、
必要なように思えた。
国内旅行ばかりだったFC旅行が、
今年は海外。
学生たちが多いファン層の俺たちに、
どれだけの申し子があるかすら手探りだった企画は、
心配に終わった。
イベントが運営できる必要人数の申し込みを確認した後は、
それぞれのメンバーを訪ねながら、
ファンクラブイベントでの打ち合わせをこなしていく。
そんな合間に二年前に、ライソゾーム病と言う難病に負けて
他界したSHADEの怜【りょう】さん。
その怜さんに出逢って、音楽に目覚めた俺や隆雪に
追悼アルバムへの参加が、
SHADE解散後、Ishimaelを結成した羚【れい】によって
打診された。
隆雪は参加できない旨を伝えて、代表で俺は参加させて貰ってる。
そんな偉大な存在の未発表曲のレコーディングなどに
明け暮れながら季節は過ぎて、夏休みを迎えることになった。
俺の意を組んで、高校生活を満喫した雪貴は
中間・学期末・実力テストと首位を独走して、
夏休みを迎える形になった。
そして祈もまた、落としかけていた学科の単位をカバーすることが出来て
卒業へと道が切り開けたらしい。