星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
俺たちの母校は、祭り好きのテスト好き。
だけどどんな学校行事にも、
テストの成績によっては一切の参加が認められない。
Ansyalの仕事で、アイツらの今を邪魔したくない。
そんな風にも思うんだ。
ただでさえ雪貴は、理事長である一綺兄さんに掛け合いながら
出席日数が足りないようなことにならないように調整しつつ、
計算して早退、欠席させて負荷をかけてる。
だからこそ、学生にとって大切な時間は、
アイツには学業を優先させてやりたかった。
アイツはTakaであると共にまだ学生なんだ。
そんな思いの中で過ごしづけた時間。
*
夏休み……。
俺の一年において、もっとも苦手とする
いろんなものが詰まりすぎた時間。
少しでも立ち止まると、理佳のことばかり考えてしまう俺は
今あるスケジュールに没頭する。
7月中は、FC旅行の準備よろしくスタジオに缶詰状態。
そして迎えた八月、FC旅行当日。
昨夜、早めに切り上げて解散し、
俺は何時もの様に報告がてら、理佳のもとを訪ねる。
陽が落ちた墓地。
だけど……Ansyalとして、何かをする時は
アイツに報告しながら、成功を祈るのが
何時の間にか習慣になってた。
グランドピアノの形をした墓石。
そこに続けられている楽譜を辿るように
視線を向ける。
出逢ったあの頃は、五線譜【おたまじゃくし】なんて
全く読めなくて、何時も理佳をからかってばかりだった。
そんな俺も音楽と携わるようになって、
今では譜読みはお手の物だ。
その墓石に綴られているのは、
理佳が妹の為に綴った一曲。
偶然か必然かなんてわかんねぇけど、
それでもその楽譜が刻まれてるってことは、
理佳の想いが届いたって思っていいのかな……なんて、
アイツに変わって考える。
手早く草を抜いて、持ってきた花を飾ると
俺はアイツの墓石の前に腰をおろした。